- 人材派遣の基本
人材派遣とは?人材紹介との違いや特徴をわかりやすく解説
人材派遣とは、派遣会社が派遣社員を雇用し、人員を必要とする企業に、一時的に人材を派遣するサービスです。
派遣先企業は新たに従業員を直接雇用する必要がなく、必要な期間のみ人材を確保できます。
企業では、人材需給のミスマッチや専門性の高い人材の確保の難しさなどを理由に、人材派遣の需要が高まっています。
人材派遣を利用する場合、派遣先企業には派遣社員に適切な労働環境を用意し法令順守を徹底するなど、受け入れるための体制構築が不可欠です。
本記事では、自社の事業戦略に合わせて適切に活用するために、人材派遣の仕組みや種類、活用するメリット・デメリット、受け入れまでの流れや派遣会社選びのポイントを解説します。
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人材派遣とは
人材派遣とは、派遣会社と派遣社員が雇用関係を結んだうえで、人員を必要とする企業へ一時的に派遣するサービスです。派遣社員を受け入れる前には、派遣先企業は派遣会社と労働者派遣契約を締結します。
この章では、人材派遣の仕組みや他のサービス、他の契約形態との違いを解説します。
人材派遣の仕組み
人材派遣とは、派遣会社が雇用する労働者(派遣社員)を派遣先企業に派遣し、特定の業務に従事してもらう仕組みのサービスです。派遣先企業は、派遣会社と労働者派遣契約を結び、自社が求める期間に、必要な人数の派遣社員を受け入れます。
派遣社員にとっては「雇用契約を結ぶ会社(派遣会社)」と「実際に仕事をする会社(派遣先企業)」が異なります。
派遣会社、派遣社員、派遣先企業のそれぞれの役割は以下のとおりです。
役割 | 説明 |
---|---|
派遣会社 | ・派遣社員を雇用し、給与や社会保険等の労務管理を行う ・派遣社員のスキルや適性を見極め、派遣先企業とのマッチングを行う ・派遣社員へのフォローやサポートを行う |
派遣社員 | ・派遣会社と雇用契約を結ぶ ・派遣先企業で指揮命令を受けながらルールに則って業務に従事する |
派遣先企業 | ・派遣社員に対して指揮命令を行う ・派遣社員の就業環境を整備し、就業状況を管理する ・派遣会社に派遣料金を支払う |
派遣先企業は、派遣社員を直接指名することはできず、提示した人材要件に合わせて派遣会社が選任します。ただし、派遣社員に対して、派遣先企業が業務の指揮命令を行うことは可能です。
派遣社員の受け入れにあたっては、労働者派遣法により、派遣先企業に、派遣先責任者の選任や派遣先管理台帳の作成・保存が義務付けられています。
人材紹介との違い
人材紹介とは、人材紹介会社から条件に見合った人材の紹介を受ける仕組みのサービスです。紹介された人材を採用したいと企業が判断した場合、双方合意のもとで直接雇用契約を結びます。
人材派遣との違いは雇用形態です。人材紹介は必要な人材が見つかれば直接雇用できる、いわば採用業務の支援を行うサービスであり、派遣先企業には採用を見越した人材の見極めが求められます。
業務委託との違い
業務委託とは、企業が外部の企業や個人事業主に対して、業務の全部または一部を依頼し、その完成された成果物に対して報酬を支払う契約形態です。人材派遣とは契約形態と指揮命令の範囲が異なります。
人材派遣 | 業務委託 | |
---|---|---|
契約形態 | ・派遣会社と派遣社員が雇用契約を結ぶ ・派遣会社と派遣先企業が労働者派遣契約を結ぶ | 委託企業と委託先が業務委託契約を結ぶ |
指揮命令 | 派遣先企業は、契約業務内において指揮命令を行う | 委託先に対しては、成果物の完成以外に関する内容や業務の進め方への指示を行えない |
人材派遣においては、派遣会社と派遣社員が雇用契約を、派遣会社と派遣先企業が労働者派遣契約を結びます。一方、業務委託は、委託企業と委託先が、業務委託契約を直接結びます。
指揮命令の範囲は、人材派遣のほうが柔軟性があり、派遣先企業は派遣社員に対して、契約業務内において細かく指示をすることが可能です。業務委託においては、契約で定められた成果物の完成以外を求めることはできません。
業務委託も人手不足を解消するための有効な手段ですが、業務の進行は細かく指示できず、仮に指揮命令をおこなった場合には「偽装請負」に該当します。
偽装請負とは、労働基準法と職業安定法で明記されている「本来締結すべき労働者派遣契約を締結せずに労働者派遣を行っている状態」で、該当した場合には、法令違反になります。
業務の遂行をどの手段で行うか迷った際は、その業務の性質を鑑みながら検討するようにしましょう。
業務の進行過程より最終的な成果物の完成度が重要である場合には業務委託、業務の進行過程において自社の意向を反映させる重要性が高い場合には人材派遣が適しています。
他の契約形態との違い
人材派遣の特徴を正しく理解し、サービスを有効に活用するためには、他の契約形態との違いも押さえておくことが大切です。
この章では、正社員、契約社員・パートタイムとの違いをみていきます。
なお、契約社員とパートタイムは、法律上の区分は同じです。企業によっては、両者の間に業務内容や労働時間、給与形態などに区別を設けるために、それぞれに別の呼称を用いています。
人材派遣との違いを比較するうえで重要なポイントは、「雇用主」「指揮命令」「契約期間」「業務内容」の4つです。
人材派遣 | 正社員 | 契約社員 パートタイム | |
---|---|---|---|
雇用主 | 派遣会社 | 就業先企業 | 就業先企業 |
指揮命令 | 派遣先企業 | 就業先企業 | 就業先企業 |
契約期間 | 有期雇用契約では最長3年 | 原則として無期雇用 | 有期雇用(更新可能) |
業務内容 | 契約で定められた業務 | 職種に応じた業務全般 | 職種に応じた業務全般 |
雇用主でみると、人材派遣のみ派遣会社であり、他の契約形態は就業先企業です。
しかし、指揮命令権は人材派遣も派遣先企業にあり、正社員や契約社員などのように直接の雇用関係になくとも、業務に関して指示を行えます。
契約期間については、人材派遣も契約社員・パートタイムと同様に有期雇用です。しかし、人材派遣の場合、同じ会社の同一組織単位に就業できる期間は最長で3年というルールがあります。
業務内容の面では、就業先企業と雇用関係にある従業員は、基本的に職種に定められた業務全般を行うことが可能です。
一方で、人材派遣では契約に定められた業務以外は行わせてはいけません。指揮命令もその業務の範囲内に限られます。
押さえておくべき「労働者派遣法」について
人材派遣には、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法といいます)」が適用されます。この法律は、派遣社員の保護と適正な運営の確保を目的としており、派遣会社と派遣先企業、双方に遵守が求められます。
労働者派遣法において、主に派遣先企業が守るべき、または努力すべき責務は以下のとおりです。特に、「派遣先の講ずべき措置等」は、派遣先企業にとって重要な部分です。
項目 | 概要 | 主な条項 |
---|---|---|
派遣可能期間の制限 | 派遣先は、同一の派遣労働者を、3年を超えて受け入れてはならない。 | 第40条の2、第40条の3 |
派遣先の講ずべき措置 | 派遣先は、派遣労働者から苦情の申出を受けたときは、その処理を行わなければならない。 | 第41条 |
派遣先の労働安全衛生責任 | 派遣先は、自社の労働者に対するのと同様に、派遣労働者に対しても労働安全衛生法上の責任を負う。 | 第45条 |
派遣労働者の雇い入れ努力義務 | ・派遣先は、一定期間継続して同一の派遣労働者を受け入れた場合、その者を雇い入れるよう努めなければならない。 ・派遣先は、派遣労働者に対し、派遣先が行う労働者の募集に関する事項の周知をしなければならない。 | 第40条の4、第40条の5 |
派遣先の均等待遇責任 | 派遣先は、派遣労働者について、派遣先の労働者との均等・均衡待遇を確保するための措置を講じなければならない。(男女の機会均等、育児休業などの福祉など) | 第47条の2から第47条の4まで |
参考:e-GOV 法律検索『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律』
派遣先企業は、派遣社員に対し「自社の従業員と同様に接すること」「雇い入れのために努力すること」とされています。
【関連記事】:労働者派遣法とは?改正点や注意点、違反例をわかりやすく解説
人材派遣の3つの形態(種類)
人材派遣には、有期雇用派遣、無期雇用派遣、紹介予定派遣の3つの形態があります。それぞれの特徴を理解しておくことで、目的に応じた利用が可能になります。
有期雇用派遣(登録型派遣)
有期雇用派遣とは、派遣会社が雇用する派遣社員を、派遣先企業に一定期間派遣する形態です。「人材派遣」は、多くがこの有期雇用派遣を指します。
派遣社員は、派遣先企業が決まったタイミングで、派遣会社と雇用契約を結びます。
有期雇用派遣の特徴は、3年以上の受け入れができない点です。
例えば、2025年4月1日に受け入れを開始した場合、原則として2028年3月31日で契約が終了します。契約終了日の翌日である2028年4月1日は「抵触日」と呼ばれ、この日以降も派遣社員に従事させると、労働者派遣法違反となります。
抵触日には「事業所単位」「個人単位」の期間制限があり、派遣先企業は派遣会社に対し、「事業所単位」の抵触日を通知しておくことが法令遵守のために重要です。
有期雇用派遣は契約終了後に再度人材を探す手間が発生する、長期的なノウハウの蓄積が困難などのデメリットがあるものの、一時的な人材不足に対して柔軟な人材を確保できる契約期間が明確であるため、計画的に利用できます。
【関連記事】:有期雇用派遣とは?無期雇用との違いや活用がおすすめの企業を解説 – スマートキャリア編集部
無期雇用派遣(常用型派遣)
無期雇用派遣は、派遣会社と派遣社員が、無期限の雇用契約を結ぶ形態です。
派遣社員は派遣会社に常時雇用されているため、有期雇用派遣とは異なり3年ルールが適用されません。派遣先企業は、長期的に同じ派遣社員を受け入れ続けられます。
派遣社員は、派遣会社が一定の採用基準に基づいて採用しており、ポテンシャルが高い人材を活用できるでしょう。
ただし、無期雇用派遣は派遣料金が有期雇用に比べて高い傾向があり、さらに有期雇用派遣より人材の数も限られている点も把握しておく必要があります。
厚生労働省の「労働者派遣事業の令和4年6月1日現在の状況(速報)」によると、有期雇用派遣の労働者は111万4,913人(59.9%)いるのに対し、無期雇用派遣の労働者は74万6,661人(40.1%)とのことです。
【関連記事】:【企業向け】無期雇用派遣とは|活用メリットや受け入れ時の注意点について
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、派遣期間の終了後に、派遣先企業が派遣社員を直接雇用できることを前提とした形態です。双方が合意すれば、直接雇用できます。
有期雇用派遣や無期雇用派遣との違いは、実際に業務を行ったうえで採用の有無を判断できることです。受け入れ前の事前面接や書類選考も可能であり、派遣社員の適性やスキルを見極めたうえで採用を決定できます。
そのため、採用後のミスマッチが少なく、長期的な人材確保につながるでしょう。
ただし、派遣できるのは紹介予定派遣を希望する人材のみに限られるうえ、候補者は辞退も可能であるため、必ずしも直接雇用が決まるわけではない点に注意が必要です。
【関連記事】:【企業向け】紹介予定派遣とは?仕組みや費用、活用時の注意点
人材派遣のメリット
人材派遣には、一時的な人材不足の解消や専門性の高い人材の確保ができる、欠員や休業者への対応ができる、採用コストや採用時間の削減につながる、社員がコア業務に注力できるようになるなどのメリットがあります。
人材派遣を活用するメリットをそれぞれ把握し、自社の採用課題に活用しましょう。
一時的な人材不足の解消
人材派遣は、一時的な人員不足に対応するのに最適な手段です。派遣社員の受け入れは臨機応変に調整できるため、必要なタイミングで人員を手配できます。柔軟な人員調整ができる人材派遣は、繁閑の変動が大きい企業にとってメリットの大きい雇用形態といえるでしょう。
また、人材派遣には期間の定めがあるため、過剰な人件費負担のリスクも抑えられます。
専門性の高い人材の確保
企業にとって高度な専門性をもった人材の確保は課題となります。例えば、以下のような場合です。
- 新規事業やプロジェクト立ち上げのために、特殊な知識や経験が必要
- 既存事業でも新製品・新サービスの開発のために、高度な技術力が必要
- 一時的に特殊な専門知識が必要となる案件がある
人材派遣を活用すれば、専門性の高い人材を柔軟に確保できます。なかでも、専門性が高いIT人材などは、採用競争率も高く、雇用した場合の費用も高くなってしまいます。
求める職種・業種と同じ領域を強みとする派遣会社を利用すると、迅速に専門性の高い人材を確保できるでしょう。
欠員や休業者への対応が可能
派遣期間を柔軟に設定できる人材派遣は、一時的な人員不足にも対応しやすく、社員の欠員や休業に伴う業務の空白を埋めるのにも有効です。
社員の産前産後休暇・育児休暇や病気休暇、介護休暇、退職などによる欠員の発生にも対応しやすくなるでしょう。
派遣会社に必要なスキルや経験を提示して人材要件をすり合わせておくことで、、短期間で即戦力となる人員を確保できます。
採用コスト、採用時間の軽減
人材派遣を利用すれば、求人広告の掲載費用や面接官の人件費など、採用にかかるコストや時間を大幅に削減できるメリットがあります。
派遣会社がすでに人材の面接や審査を行っているため、自社で改めて採用活動を行う必要がありません。派遣社員の労務管理も派遣会社が行うため、自社の管理工数も削減できます。
社員がコア業務に注力可能
派遣社員に補助的な業務を任せることで、正社員は本来のコア業務に集中できるようになります。
一時的な人手不足が生じると、社員がノンコア業務に時間を割かれる場合があります。その結果、本来の業務に専念できなくなり、業務の停滞や生産性の低下を招きかねません。
一時的な人材確保が必要な場合に派遣社員を柔軟に活用すると、社内の人員リソースを最適化でき、正社員がコア業務に専念できる環境を整えられます。
例えば、年度末や決算期などの繁忙期、新サービス開発時の人員補強、ITエンジニアやデザイナーなど専門知識が必要な業務などが挙げられます。
人材派遣のデメリット
一時的な人材不足の解消や専門性の高い人材の確保など、さまざまなメリットがある人材派遣ですが、注意しなければならないデメリットも存在します。
例えば、業務範囲は契約で定めた内容のみ、派遣期間に制限がある、派遣禁止業務があるなどが挙げられます。
それぞれ解説しますので、法令違反とならないよう注意しましょう。
契約で定めた業務範囲のみ
人材派遣では、派遣先企業と派遣会社間で締結された労働者派遣契約に基づいて、派遣社員に従事させられる業務の範囲が決まります。
派遣社員には、それ以外の業務は求められず、業務範囲を超えた指示は法令違反となるため、派遣先企業は十分に注意する必要があります。
派遣期間の制限
人材派遣には、雇用形態により派遣期間の制限が異なります。無期雇用派遣は派遣期間の定めがありませんが、紹介予定派遣には原則6カ月、有期雇用派遣には原則3年の受け入れ制限が生じます(3年ルール)。
3年ルールは、派遣社員の雇用の安定を図るために、2015年の労働者派遣法改正時に導入された措置です。
労働者派遣法では、派遣先企業に対して派遣社員の雇い入れ努力が求められていますが、3年ルールには以下の例外事由があります。
例外事由 | 詳細 |
---|---|
派遣社員の年齢が60歳以上 | 3年経過時点で派遣社員が60歳以上の場合(正社員へのキャリアアップより、安定雇用が優先される) |
期間が明確な有期プロジェクト | 事業の開始・転換・拡大・縮小・廃止を目的とする、終了期間が定められた業務の場合(あらかじめ3年以上の契約を結べる) |
日数限定業務 | 1カ月の労働日数が社員の半分以下であり、かつ10日以下の業務に携わる場合 |
産前産後、育児休業・介護休業の代替要員 | 産休などに入る社員の業務をそのまま引き継ぐ場合(代替要員のため、元の社員が行なっていた業務の範疇を超えることはできない) |
無期雇用派遣 | 派遣社員が派遣会社と無期雇用契約を結んでいる場合 |
このように、明確な目的がある事由や、派遣社員の雇用の安定化を阻害しない事由においては、3年ルールの適用外になります。
教育コストは必要
派遣社員への教育は、派遣先企業の責任となります。派遣社員はあくまで一時的な人材であり、派遣先企業に合わせた業務知識、社内ルール、IT環境などについて教育が必要となるでしょう。
派遣社員向けに業務マニュアルなどを作成しておくと、教育コストを大幅にカットできます。
【関連記事】:派遣社員の受け入れとは丨流れや必要な準備、注意点をプロが解説
派遣人材の選考はできない
人材派遣の場合、派遣会社が派遣社員の選考を行います。派遣先企業が派遣社員を直接選考することはできません。
とはいえ、派遣社員の選考は、派遣会社と派遣先企業との間で人材要件をすり合わせ、それに基づいて行われます。優秀な派遣社員を受け入れるためには、派遣会社との十分なすり合わせが重要です。
【関連記事】:派遣特定行為とは?禁止の背景や違反事例を徹底解説
派遣禁止業務がある
人材派遣には、労働者派遣法で派遣が禁止されている業務があり、派遣社員に従事させると、法令違反となってしまいます。主な派遣禁止業務は以下のとおりです。
派遣禁止業務 | 理由 | 主な作業や業種 |
---|---|---|
港湾運送業務 | 業務の特殊性を鑑み、特別に港湾労働法等において、各種調整が行われているため | 港湾に関連する荷役、積卸しなど |
建設業務 | 業務の特殊性を鑑み、建設労働者の雇用の改善等に関する法律で特別な調整が行われているため | 建築物の施工、改修など |
警備業務 | 業務の適正実施のために、請負形態で行うことが定められているため | 施設警備、交通誘導など |
医療関連業務 | 高度な専門知識と技術が必要なため | 医師、看護師、薬剤師など |
士業(弁護士など) | 高度な専門知識が必要で、業務の適正確保が困難なため | 弁護士、司法書士、土地家屋調査士などの専門職務 |
派遣社員に適正な業務を行わせるためには、派遣先企業は派遣会社と十分な打ち合わせを行い、派遣可能な業務範囲を確認する必要があります。
【関連記事】:派遣の禁止業務とは?禁止理由や罰則、例外業務について解説
人材派遣の活用シーン
人材派遣は、企業にとって以下のようなシーンで活用できます。
- 繁忙期などの一時的な人員補充
- 期間が定められたプロジェクトにおける要件に沿う人材の確保
- 期間限定での大量の人手確保
- 既存社員の休暇や退職に対する人員補充
派遣社員は専門スキル・経験を有する人材も多いため、新規立ち上げのプロジェクトなど、「期間の定めはあるが、ハイスキル人材の確保が急務」という状況下でも効果的な選択となるでしょう。
【関連記事】:派遣と業務委託を徹底比較!最適な活用シーンを事例付きで解説
人材派遣にかかる費用の仕組み、相場
人材派遣は、派遣社員を直接雇用しているわけではないため、他の社員やアルバイトなどと同じように派遣先企業が給料を支払うシステムではありません。
この章では、人材派遣の費用の相場や内訳、給与の決まり方を解説します。
費用の相場
派遣先企業は、労働者派遣の対価として、派遣会社に派遣料金を支払います。
厚生労働省の「令和4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によると、2022年における派遣料金は、8時間換算で2万4,909円(税込)でした。前年度より、1.8%増えたようです。
なお、その中に含まれる派遣社員への賃金平均は、8時間換算で1万5,968円(対前年度比:1.7%増)でした。
【関連記事】:人材派遣の料金相場は?内訳や派遣料金を抑えるポイントを紹介
人材派遣の費用内訳
人材派遣で発生する費用は、直接雇用とは費用のかかり方が異なります。
初期費用(イニシャル) | 継続費用(ランニングコスト) | |
---|---|---|
直接雇用 | ・広告などの費用採用担当者の人件費・サービスの利用料など | 給与教育コスト |
人材派遣 | 不要 | ・派遣会社へのサービス対価・派遣社員の教育コスト |
人材派遣は、依頼業務によっては受け入れ準備のためにパソコンなどの備品を整備する必要があるものの、基本的には初期費用が不要です。
ただし、継続費用は直接雇用と同様に必要となり、派遣会社へのサービス対価(以下、派遣料金といいます)がかかります。
派遣料金は、大きく分けて「派遣社員への給与」と「マージン」に分けられます。
引用:一般社団法人 日本人材派遣協会「データ」
派遣料金の約70%は派遣社員の給与で占められています。
マージン率
派遣料金は、給与とマージンの合計で決まります。以下の項目がマージンに含まれます。
- 社会保険料
- 派遣社員の有給費用
- 諸経費(会社運営経費、教育訓練費など)
- 営業利益
派遣料金全体に占めるマージンの割合が「マージン率」です。
マージン率は、派遣社員1人分の派遣料金からではなく、その派遣会社の派遣料金における平均から算出されます。
計算式は以下のとおりです。
例えば、1日当たりの派遣料金の平均額が1万8,000円、1日当たりの派遣社員の平均賃金が1万2,600円とすると、マージン率は30%になります。
マージン率を見る際に重要なポイントは「マージンが何にあてられているか」という点です。なぜなら、マージンは社会保険料や有給費用など派遣社員に直接還元されるものもあれば、派遣会社の営業利益にあてられる部分もあるためです。
マージン率が高いにもかかわらず福利厚生が不十分な状況であれば、派遣社員の満足度が低い可能性があります。
なお、派遣会社のマージン率については、労働者派遣法により、毎事業年度に1回、厚生労働大臣に対して事業所ごとの情報を提供することが義務付けられています。
厚生労働省は、この情報に基づいてマージン率の推移を公表しており、その値はおよそ30〜35%です。
多くの場合、派遣会社のWebサイトでもマージン率を確認できるため、派遣会社を選ぶ際に活用するとよいでしょう。
【関連記事】:派遣会社のマージン率とは?内訳や計算式、会社選びのポイントを解説
派遣社員の給与の決まり方
派遣社員への給与支払いを行うのはあくまで派遣会社ですが、派遣料金にも関わってくるため、派遣先企業も給与の決まり方を把握しておくとよいでしょう。
派遣会社は、労使協定方式か派遣先均衡・均等方式いずれかを採用し、派遣社員の給与を決定しています。
方式 | 特徴 |
---|---|
労使協定方式 | 地域の同種業務の平均賃金に基づいて待遇を決める。地域の一定水準以上の給与は担保されるが、派遣先企業の給与水準によっては、他の社員よりも給与が低くなる場合がある。 |
派遣先均衡・均等方式 | 同一労働同一賃金の考え方に基づいて、派遣先企業の通常労働者との均等・均衡な待遇を確保する。派遣先企業の給与水準によって賃金が変動する。 |
労使協定方式は、派遣会社が、労働組合や労働者の過半数代表者と協定を結び、その協定に基づいて派遣社員の待遇を決定する方式です。
派遣先企業の所在地域で同種業務に従事する一般労働者の平均的な賃金以上とすることが求められ、派遣社員のキャリアアップを促すために、派遣会社は昇給規程などの賃金改善の仕組みを設けなければいけません。
労使協定方式の場合、派遣先企業は派遣会社に対して、教育訓練や福利厚生施設などを伝える必要があります。
一方、派遣先均衡・均等方式は、基本給から賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理まで、すべての待遇において、派遣先企業の通常労働者との間に不合理な待遇差がないように待遇を決定する方式です。
派遣先企業は、派遣会社に対して、比較対象労働者の職務内容や配置変更範囲、賃金、福利厚生などを伝えます。
人材派遣を依頼してから受け入れまでの流れ
実際に人材派遣を利用する際にどのような流れで受け入れるのか、派遣会社はどのように選べばよいかなど、具体的に知りたい人もいるでしょう。
依頼から受け入れまでの、一般的な流れは以下のとおりです。
- 採用人材の要件定義
- 派遣会社の選定
- 派遣会社との打ち合わせ、依頼
- 派遣社員の決定
- 受け入れ開始
この章では、より実践的な内容を紹介していきます。
【関連記事】:派遣社員の受け入れとは丨流れや必要な準備、注意点をプロが解説
1. 採用人材の要件定義
人材派遣を依頼する際、重要なのは採用人材の要件を明確に定義することです。要件を具体的に決めなければ、期待する人材を確保できない可能性があります。
要件定義の際は、以下の項目を明確にすると、受け入れまでがスムーズに進み、採用後のミスマッチも無くせます。
項目 | 内容 |
---|---|
募集人数 | 具体的な必要人数 |
求める経験 | ・どのような職種の経験が必要か ・あると望ましい経験年数 |
スキル・資格 | ・必須スキル、資格 ・あれば望ましいスキル、資格 |
稼働日数 | 週に何日、何時間の稼働が必要か |
勤務形態 | 出社なのか在宅勤務が可能なのか |
業務をスムーズに進めるために必要な要素を考え、自社が求める人物像を明確化しましょう。
2. 派遣会社の選定
人材要件にマッチした社員を見つけてもらうためには、まず自社にあった派遣会社を選ぶことが大切です。派遣会社によって、派遣料金や登録スタッフ数、特定業種への強みなどが異なります。
選定する際は、1社に定めるのではなく、複数の会社に問い合わせをし、担当者の対応力などを比較しながら最終決定するのがおすすめです。
【関連記事】:【企業向け】人材派遣会社18社比較|各社の特徴や選び方、活用の流れ
3. 派遣会社との打ち合わせ、依頼
利用する派遣会社の目処が立ったら、次は打ち合わせを行います。このとき、一般的には以下のような項目のすり合わせを行なっていきます。
希望開始日 | いつまでに人材を確保したいか、勤務開始希望日 |
勤務地 | 勤務地や勤務地の条件(転勤の有無、勤務地の変更の可能性など) |
期間 | 業務のスケジュールなどに基づく、派遣契約の期間(3カ月、6カ月、1年など) |
勤務時間 | 勤務時間やシフトの詳細 |
休日 | 休日の詳細(完全週休2日制、祝日など) |
残業時間 | 残業の有無や残業時間の目安 |
体制 | 配属される部署の体制 |
打ち合わせは、明確な内容で進めましょう。先に整理した人材要件を、さらに具体化していきます。
4. 派遣社員の決定
派遣先企業は、派遣社員の面接を行えません。派遣会社との打ち合わせで定義した人材要件・労働条件などに基づいて、派遣会社がマッチングを進めていきます。
派遣社員は、就業先を選ぶ際に、職場見学を希望できます。
職場見学では、直接訪問や担当者との会話を通じて、派遣社員が職場の雰囲気や業務内容を把握できるため、認識の相違やミスマッチを防ぐことが可能です。
派遣先企業は、依頼があった際に対応できるようにしておきましょう。
受け入れに問題がなければ、派遣会社と派遣先企業で労働者派遣契約を締結します。この契約は以下の2つに分かれます。
- 派遣先企業と派遣会社のあいだで締結される基本契約
- 個々の労働者ごとの条件をまとめた個別契約
受け入れにあたり、派遣先企業には、派遣先管理台帳の作成・保管義務も生じます。台帳には、派遣社員の氏名や従事した業務の種類など、派遣社員1人ひとりの詳細な情報を記載します。
5. 受け入れ開始
契約を締結したら、いよいよ受け入れ開始です。派遣社員の勤務が始まる前に、社内全体に派遣社員が来ることを周知し、円滑に業務を始められる環境を整えておきましょう。
まず、準備するのは、派遣社員が使用するネットワーク環境やPC、必要な備品などです。これに加えて、担当してもらう業務に関するマニュアルや、前任者からの引き継ぎ資料も整理しておくと、スムーズに受け入れを進められます。
気持ち良いスタートは、派遣社員のモチベーションや業務効率の向上にも良い影響をもたらします。良好な関係性を保ち貢献してもらうためにも、派遣先企業は、派遣社員を迎える体制を整えておくことが大切です。
【関連記事】:派遣社員の受け入れとは丨流れや必要な準備、注意点をプロが解説
人材派遣会社・サービスを選ぶポイント
派遣会社を選ぶ際は、以下のポイントに注目しましょう。
- 自社ニーズへの対応
- 派遣形態
- 対応職種
- 企業の実績、評価、信頼
- 対応エリア
- フォロー体制、営業担当者
- 料金の目安
それぞれ解説しますので、自社に適した派遣会社を見つける参考にしてください。
【関連記事】:【企業向け】人材派遣会社18社比較|各社の特徴や選び方、活用の流れ
【関連記事】:【企業向け】東京の人材派遣会社10選|派遣会社選びのポイントも解説
自社ニーズへの対応
人材派遣を検討する際には、自社のニーズに合った派遣会社を選ぶことが重要です。 自社のニーズを満たせない派遣会社を選んでしまうと、期待する人材が得られないだけでなく、作業効率の低下や業務品質の低下につながる恐れがあります。
具体的には、以下の点を確認する必要があります。
- 自社で求める職種・スキルに対応しているか
- 必要な勤務地や勤務時間に対応できるか
- 求める人材の経験年数や専門性を満たせるか
- 人材の質を保証する体制があるか
- 求める人数を手配できるか
- 自社の事業内容や業務内容を理解しているか
- 派遣料金が自社の予算に見合っているか
派遣会社にしっかりと伝えるために、派遣先企業は事前に自社の求める人材像を明確にしておくことが大切です。複数の派遣会社と面談し、自社のニーズへの対応力を比較検討するのがよいでしょう。
派遣形態
人材派遣には、派遣可能期間が最長3年の有期雇用派遣、期間に定めのない無期雇用派遣、最長6カ月の後に直接雇用も可能な紹介予定派遣があります。
派遣形態は、派遣先企業の求める人材ニーズや、派遣社員の希望に合わせて選択されます。有期雇用派遣は一時的な人材補充に、無期雇用派遣は長期的な人材確保に、紹介予定派遣は将来の正社員雇用につながる派遣形態です。
派遣先企業は、自社のニーズを明確にし、最適な形態を検討しましょう。
対応職種
派遣会社によって強みとする職種は異なります。主な対応職種は、以下のとおりです。
職種 | 具体例 |
---|---|
事務職 | 一般事務、経理事務、受付、データ入力など |
管理部門職 | 経理、労務、総務、人事、法務など |
技術職 | SE、プログラマー、設計、CADオペレーターなど |
営業職 | 販売員、営業、コールセンタースタッフなど |
製造職 | 工場作業員、検査員など |
自社が必要とする職種に合わせて派遣会社を選定すると、求めるスキルや経験をもつ人材に出会いやすくなります。
派遣会社の実績、評価、信頼
信頼できる派遣会社を選ぶことは、質の高い人材を確保し、安定した派遣業務を行うために不可欠です。派遣会社の実績や評価を確認するうえで参考になるのは、以下の点です。
- 設立年数と派遣実績
- 取引先企業の評判
- 各種認証の取得状況
長年の実績をもつ派遣会社は、豊富な経験とノウハウを蓄積しています。
また、これまで取引した派遣先企業数や登録している派遣社員数は派遣会社の対応力を、大手企業や有名企業との取引実績は派遣会社の信頼性を示す指標となるでしょう。
取引先企業の評判や口コミは、派遣会社の質を判断できます。
法令遵守や適正な運営に積極的に取り組んでいる証である、以下のような認証を取得しているかを確認するのもおすすめです。
認定・評価項目 | 認定内容 |
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優良派遣事業者認定 | 厚生労働省が認定する、労働者保護と雇用の安定に取り組む優良な派遣会社 |
一般社団法人日本人材派遣協会会員 | 法令遵守と適正な派遣事業運営を行う派遣会社で構成される業界団体 |
プライバシーマーク | 個人情報の適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者 |
ISO9001 | 品質マネジメントシステムの国際規格 |
ISO27001 | 情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格 |
これらの認証は、派遣会社の法令遵守や適正な運営体制を示す指標となります。加えて、実際のサービス内容や対応力など総合的に判断することが大切です。
また、派遣会社の経営状況も確認しておくのがおすすめです。財務諸表などの公開情報から、派遣会社の安定性や成長性を読み取れます。
派遣会社の実績、評価、信頼性を多角的に確認すると、自社に最適な派遣会社を選択できます。結果として、派遣業務の成功と派遣社員の安定した就業環境の確保につながるでしょう。
対応エリア
派遣会社によって、全国対応可能な大手企業もあれば、特定の地域に特化した地域密着型の企業もあるため、対応エリアの確認も必須です
全国対応の大手派遣会社であれば、拠点のない地域でも人材派遣が可能です。幅広い職種の人材も豊富に確保できるため、専門性の高い人材や大量の人材が必要な場合に適しています。
ただし、大手の派遣会社は地元密着型の派遣会社と比べると、派遣社員へのフォローがやや手薄になる可能性があります。
とはいえ、地場密着型の派遣会社は対応エリアが限定的であり、複数拠点での人材確保や、特定の職種の人材確保が難しい場合もあるでしょう。対応エリアの他、登録スタッフ数や対応職種など、総合的な判断が必要です。
フォロー体制、営業担当者
フォロー体制は、派遣先企業だけでなく派遣社員へのサポート内容も重要な要素です。派遣社員へ手厚いフォローが行われていれば、派遣先企業と派遣社員とのトラブルも未然に予防でき、派遣社員が気持ち良く働けます。
あわせて、営業担当者の対応力もみておきましょう。派遣社員の紹介のみならず、企業の課題や要望をしっかり汲み取って最適な人材を提案できる営業担当者がいると、安心して人選を任せられます。
料金の目安
派遣会社によって料金設定は異なるため、あらかじめ予算を設定しておきましょう。料金の目安を定めておくことで、派遣会社の絞り込みがスムーズに進みます。
具体的には、自社の予算や業務内容、必要とする人材のレベルを踏まえ、許容できる派遣料金の上限と下限を設定しておくのがおすすめです。
ただし、派遣料金が安すぎると、十分な能力や経験をもつ人材の確保が難しくなる可能性があります。
また、派遣料金は、同じ職種でも、経験年数やスキルレベルによって異なります。例えば、ITエンジニアの場合、言語や開発環境、プロジェクト経験などによって、時給の幅は大きく変わるでしょう。
そのため、必要とする人材の詳細なスキルセットを明確にし、それに見合った料金レンジを想定することが重要です。
派遣料金は、派遣期間の長さによっても変動します。短期の派遣では1日当たりの料金が高くなる傾向にありますが、長期の派遣では月単位や年単位での契約となるため、トータル費用を抑えることも可能です。
自社のプロジェクトの期間や予算に合わせて、最適な派遣期間を検討すると、無駄な費用を抑えられます。
人材派遣の注意点(禁止事項)
人材派遣サービスを利用する前には、禁止事項や注意すべきことを押さえておきましょう。派遣が禁止されている業務もあるため、自社サービスが該当する恐れがあるか、確認することが大切です。
労働者派遣法で、人材派遣を利用する際に禁止されている事項は、以下のとおりです。
- 二重派遣
- 日雇い派遣
- 派遣先の責任
- 派遣社員の選定、選考
- 派遣禁止業務
- 受入期間の制限
それぞれ解説します。
【関連記事】:派遣の禁止業務とは?禁止理由や罰則、例外業務について解説
二重派遣
二重派遣とは、派遣会社から派遣された社員を、さらに別の会社に再派遣することを指します。
派遣先企業は、派遣社員と雇用関係にないため、自社の判断で他の企業に派遣する権利がありません。派遣社員は派遣先企業のもとで業務に従事させましょう。
【関連記事】:二重派遣とは|該当例と禁止理由、防止策をわかりやすく解説
日雇い派遣
日雇い派遣とは、30日未満での派遣を指します。以前はこの形態も存在していましたが、現在は禁止されています。
ただし、以下に該当する場合は日雇い派遣が可能です。
引用:厚生労働省「日雇派遣の原則禁止について」
上記に該当していない場合には、31日以上の契約を結ばなければいけません。
【関連記事】:日雇い派遣とは?禁止理由と例外ケース、受け入れ時の注意点を解説
派遣先企業の責任
派遣社員を受け入れる際、派遣先企業は以下の責任を負います。
- 派遣社員の苦情への対応
- 自社の社員と同様の対応(安全衛生や男女の機会均等、育児休業などの福祉など)
- 派遣社員の雇い入れ努力
これらは労働者派遣法で明記されている事項です。遵守できずに違反した場合、罰則の対象となるため注意しましょう。
【関連記事】:派遣社員を直接雇用に切り替える方法丨メリット・手順を解説
【関連記事】:無期転換ルールとは?派遣先企業への影響と対策方法を解説
派遣社員の選考、特定
派遣先企業は、派遣社員を受け入れる際、選考や特定の人物の指名ができません。派遣社員は、派遣会社によって、派遣先企業が示した人材要件に合わせて選定されます。
派遣先企業は、人材のミスマッチングを未然に防ぐために、派遣会社に自社の求める人材要件をしっかりと伝えることが大切です。
【関連記事】:派遣特定行為とは?禁止の背景や違反事例を徹底解説
派遣禁止業務
そもそも、人材派遣サービスを利用できない業務があります。具体的には以下のとおりです。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関連業務
- 士業(弁護士など)
自社の業務がこれらに当たらないか、あらかじめチェックしておきましょう。
【関連記事】:派遣の禁止業務とは?禁止理由や罰則、例外業務について解説
受入期間の制限
派遣社員を受け入れる際は、労働者派遣法で受入期間に制限が設けられています。この制限の目的は、派遣社員の雇用の安定化と公正な評価・処遇の確保です。
受入期間を超えて派遣社員を就業させると、労働者派遣法違反として、派遣先企業は是正指導や雇入れ勧告、社名の公表などの対象になる可能性があります。
特に、原則3年が上限となる有期雇用派遣や、最長6カ月が上限の紹介予定派遣では制限を超える抵触日を失念しないよう注意しましょう。
人材派遣でよくある質問
直接雇用と取り扱いが大きく異なる人材派遣では、さまざまな疑問が聞かれます。この章では、人材派遣に関する質問に回答します。
派遣社員に残業や休日出勤をさせることは可能?
派遣社員への残業依頼や休日出勤依頼は可能です。ただし、残業や休日出勤の可能性がある場合は、あらかじめ派遣会社に伝え、契約書に記載しておく必要があります。
また、残業や休日出勤に関するルールは、派遣会社側で締結している36協定が適用されます。36協定が締結されていない場合は、可能な残業時間も変わってくるため、派遣会社に締結・届出状況を確認しておきましょう。
派遣社員に有給はある?
派遣社員の有給休暇は、通常の雇用契約と同じルールが適用されます。派遣会社から派遣社員に有給休暇が付与され、派遣社員の有給休暇の申請・承認は、派遣会社と派遣社員の間で執り行われます。
派遣先企業としては、派遣社員が有給休暇を取得しやすいように、働きやすい労働環境を整えることが大切です。有給休暇を希望しづらい過剰な業務量がある、休まないことが美徳とされるような風土があるなどの状況は、派遣社員とのトラブルにつながります。
派遣社員からの評判が悪ければ、継続的な人材派遣の利用に影響を及ぼす可能性もあります。派遣社員と良好な関係を築けるように努めることも、派遣先企業の責務といえるでしょう。
派遣社員の副業の取り扱いは?
派遣社員が副業をすることは、基本的に可能です。ただし、派遣先企業の就業規則で副業の取り扱いが定められている場合は、その内容に従う必要があります。
例えば、以下のような内容が挙げられます。
項目 | 内容 |
---|---|
事前承認 | 副業をする前に事前承認が必要 |
勤務時間外 | 副業は派遣先企業の勤務時間外 |
業務に支障がないこと | 副業によって派遣先企業の業務に支障が出ないことが前提条件 |
派遣社員の副業については、派遣会社と派遣先企業の双方で、それぞれ取り扱いが異なる場合があります。事前に派遣会社にも確認しておくことが大切です。
派遣社員は福利厚生の対象になる?
派遣社員も福利厚生の対象です。ただし、派遣社員が雇用されているのは派遣会社であるため、福利厚生を与えるのも派遣会社です。
とはいえ、人材派遣で派遣先均等・均衡方式をとっている場合、派遣先企業の福利厚生に合わせることになります。
人材派遣で優秀な人材を獲得するポイント
人材派遣を活用して優秀な人材を獲得するためには、派遣会社に丸投げしてはいけません。派遣先企業も、以下で紹介するポイントを押さえて、能動的にアクションを起こすことが大切です。
- 採用要件を明確にする
- 派遣会社と十分にすり合わせる
- 時短勤務・時短派遣をうまく活用する
優秀な人材の中には、家庭の事情などで短時間勤務を希望する方や、フレキシブルな働き方を求める方もいます。このような人材を獲得するために、時短勤務や時短派遣を取り入れるのも有効です。
時短派遣の活用は、優秀な人材の確保につながるだけでなく、人件費の削減というメリットもあります。業務によっては、常勤の社員を雇用するより、必要な時間のみ派遣社員を活用するほうが効率的なケースもあります。
例えば、繁忙期や業務のピーク時に合わせて時短派遣を活用すると、通常時は最小限の人員で運営しつつ、必要なときのみ人材を増強することが可能です。人件費を抑えながらも、業務の質を維持できます。
派遣会社には、柔軟な働き方を希望する方が多く登録している会社もあります。このような派遣会社を利用すると、通常の勤務形態では獲得が難しい優秀な人材を確保できるでしょう。
まとめ
人材派遣とは、派遣会社と派遣社員が雇用関係を結んだうえで、人員を必要とする企業へ一時的に派遣するサービスです。一時的な人材不足の解消や専門的な人材の確保、欠員や休業者への対応など、さまざまな場面で活用できます。
ただし、契約により業務範囲が限定される、派遣期間に制限があるなど、注意点もあります。
人材派遣の活用を成功させる鍵は、法律の正しい把握と戦略的な活用です。自社の事業目標や人材ニーズを見据えて、適切な人材派遣の活用方法を検討しましょう。
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