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派遣会社のマージン率とは?内訳や計算式、会社選びのポイントを解説

人材派遣会社と一口にいっても、料金形態や特徴はさまざまです。人材派遣の利用を検討して複数の派遣会社から見積もりを取得したものの、マージン率の違いがわからず、何を基準に選べばよいか迷ってしまう人事担当者は少なくないのではないでしょうか。

マージンと聞くと「低いほど良い」と思いがちですが、人材派遣におけるマージン率は、必ずしも「低ければ良い」わけではありません

この記事では、派遣会社を選ぶうえでの検討する必要があるマージン率について、定義や適正な割合、高い(低い)ときに考えられることなどを詳しく紹介します。


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マージン率とは

マージン率とは、派遣会社が設定する派遣料金のうち、「マージン」が占める割合のことです。マージンとは、派遣先企業が派遣会社に支払う派遣料金から、派遣社員に支払われる給与を差し引いたものを指します。

マージンは、以下の4つの項目から構成されています。

マージンの構成項目詳細
社会保険料健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの費用
教育訓練費派遣社員のスキル向上を目的とした訓練費
有給費用派遣社員の有給休暇
諸経費募集広告費(媒体掲載料など)、福利厚生費、システム管理費、(派遣会社担当者の)人件費
営業利益利益派遣会社が事業を行ううえで得られる利益

つまり、派遣料金は、大きく分けて「派遣社員への給与」と「マージン」の2つがあり、マージンのなかには派遣会社の運営事業に必要な費用と利益が含まれている形です。

引用:一般社団法人 日本人材派遣協会「データ

マージン率の計算式

マージン率は、派遣会社の「派遣料金平均」から算出されます。一人の派遣社員の派遣料金から算出されるわけではない点に留意しましょう。

マージン率の計算式は、以下のとおりです。

(派遣料金の平均額 – 派遣社員の平均給与)÷ 派遣料金の平均額 × 100

例えば、派遣料金の平均額が16,000円、派遣社員の平均給与が11,000円の場合、マージン率は以下の計算式で求められます。

(16,000 – 11,000)÷ 16,000 × 100 = 31.3%(小数点第一位未満の端数は四捨五入)

適正なマージン率とは?

マージン率には派遣社員の教育費用や社会保険料が含まれているため、マージン率 = 派遣会社の売上となるわけではありません。

派遣会社を選ぶときは、マージン率の相場だけでなく、マージンが何に使われているのか、なぜマージン率が低いのか(高いのか)を知ることが大切です。

マージン率の相場

一般的な派遣会社のマージン率の相場は「30%程度」とされています。

引用:厚生労働省「マージン率等の情報提供について p.2

マージン率の相場は、年々上がっています。厚生労働省の調査によると、2004年の労働者派遣事業のマージン率は28.5%でしたが、2018年は35.4%にまで上昇しました。

背景に、働き方の多様化や派遣社員を受け入れる企業の増加、派遣会社のサービス向上があると考えられます。

また、マージン率は派遣料金が高い業務ほど高くなる傾向があります。

技術が評価される専門・技術系業務派遣ではマージン率が平均より高く設定され、定型的な業務が多く人手が求められる場合はマージン率を低く抑えられるようです(参照:派遣元事業所のキャリア形成支援と雇用安定措置 p.4,18|労働政策研究・研修機構)。

主要派遣会社のマージン率一覧

派遣会社の主要なところでは、マージン率が以下のように設定されています。なお、以下のマージン率は、いずれも各企業が公表している数字を参照しています。

派遣会社マージン率対象期間
ビースタイル スマートキャリア30.7%2022年4月1日~2023年3月31日
パーソルテンプスタッフ(新宿オフィス)30.2%2022年4月1日〜2023年3月31日
リクルートスタッフィング(本社)32.8%2023年4月1日〜2024年3月31日
スタッフサービス(新宿オフィス)25.8%2023年4月1日〜2024年3月31日
アデコ(本社)28.5%2022年1月1日〜2022年12月31日
パソナ(本社)30.8%2022年4月1日〜2023年3月31日
ランスタッド(東京本社)28.0%2023年4月1日〜2024年3月31日
マンパワーグループ(新宿オフィス)32.1%2023年1月1日〜2023年12月31日
ウィルオブ・ワーク(本社)28.6%2022年4月1日〜2023年3月31日
エスプールヒューマンソリューションズ(新宿本社)30.73%2022年12月1日〜2023年11月30日

マージン率が高い/低い場合の意味合い

マージン率は派遣会社を選ぶ際の指標の一つとなりますが、「高ければ良い」「低い方が良い」というものではありません

マージン率が高い場合は、以下のようなケースが考えられます。

  • 会社の交渉力が高く、取引相手となる派遣先企業が多い
  • 広告費用をかけており豊富な人材がいる
  • 手厚い福利厚生で人材のモチベーションが高い
  • 研修が充実しており、スキルの高い人材がいる

一方、マージン率が低い場合は、これから実践的なスキルを身につけようとしている派遣社員が多いなどの可能性が考えられるでしょう。専門性の高い人材を確保したいシーンでは、念のため注意しておきたいところです。

マージン率だけで判断せず、派遣会社の特徴やサービス内容などを総合的に判断することが重要になります。

マージン率の公表が義務化された背景

2000年代以降、製造業への派遣解禁などを背景に派遣社員が増加する一方で、派遣社員を巡る問題が顕在化しました。例えば、2008年のリーマンショックにより、雇用の調整弁として派遣社員が多く解雇された「派遣切り」は、多くの人が覚えているのではないでしょうか。

こうした問題を受け、2012年の労働者派遣法の改正では、派遣社員の待遇改善と労働市場の透明性向上を目指した「マージン率の公表」が定められました。さらに、2021年の改正では、インターネットによるマージン率等の情報提供も義務化されています(参照:キャリアアップ措置や雇用安定措置等の派遣元の責務が強化されます|厚生労働省)。

<マージン率の公表によって期待される効果>

効果概要
派遣社員の権利保護派遣社員は、自身の賃金決定プロセスを把握でき、自身の待遇について理解を深められる
派遣会社間の健全な競争促進派遣会社間の比較が容易になるため、各派遣会社はより適正なマージン率の設定や、サービスの質の向上を図る必要性が生じる
労働市場の透明性向上労働市場全体の透明性を高め、派遣社員、派遣先企業、派遣会社の間に公平な関係が構築される

人材派遣の利用にかかる費用

派遣先企業にかかる人材派遣の費用は、大きく「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」に分かれます。派遣費用にはどのようなコストがかかるのか、相場としていくらかかるのかを、詳しく見ていきましょう。

イニシャルコストとランニングコスト

通常、人材を採用する場合にかかるイニシャルコスト(初期費用)は、求人広告費や選考にかかる人件費といった「採用費」、社員の教育にかかる「教育費」、派遣社員が業務に使用するPCや制服などの「準備費」に大分されます。

人材派遣の場合、採用活動は派遣会社が行うため、採用費はほとんどかかりません。スキルのある人材を雇用したり、業務に用いる設備や備品がすでにあったりする場合、教育費や準備費もほぼかからないといってよいでしょう。

そのため、派遣社員の受け入れにかかるイニシャルコストは、通常の人材採用よりも安く済むのが一般的です。

一方、ランニングコスト(継続費用)は、人材派遣の場合は派遣会社に支払う派遣料金が該当します。派遣料金には派遣社員の給与だけでなく、派遣会社へのマージンも含まれているため、直接雇用と比較するとやや割高になるのが一般的です。

派遣費用の相場

人材派遣の料金相場は、さまざまな要因によって大きく変動します。主な要素としては、派遣社員のスキルや経験、職種、勤務地、派遣会社のマージン率などが挙げられます。

例えば、エンジニアやIT関連職、通訳など専門性の高い職種は派遣費用が高くなり、事務職(デスクワーク中心)や製造・軽作業系の職種は相場が安くなる傾向にあります。また、東京は地方と比べて相場が高めです。

派遣費用の相場だけで派遣会社を比較するのは難しいため、次で紹介する「派遣会社の比較ポイント」も参考にしてみてください。

マージン率以外の派遣会社の比較ポイント

マージン率は派遣会社を選ぶうえで重要な指標の一つになりますが、自社にとって最適な派遣会社を選ぶためには、より広い視野で比較することが重要です。マージン率以外に比較すべきポイントとして、以下のような項目が挙げられます。

  • 自社ニーズへの対応
  • 派遣形態
  • 対応職種
  • 登録スタッフ数
  • 対応エリア
  • 派遣スタッフへのサポート体制

これらの項目を総合的に判断することで、自社にとって最適な派遣会社を選べるようになります。

自社ニーズへの対応

人材派遣を検討する際は、自社のニーズに合った派遣会社を選ぶことが重要です。まずは、求める職種・スキル、必要な勤務条件、経験・専門性、必要な人数、業務内容の特殊性などを明確にしたうえで選びましょう。

次に、これらの要件に対応できる派遣会社を探します。候補となる会社の実績、人材の質、保証体制、自社事業への理解度などを慎重に評価することが重要です。

適切な派遣会社の選定は、期待通りの人材確保と業務効率の向上につながります。逆に、ミスマッチがあると業務効率や品質の低下につながりかねません。複数の派遣会社との面談を通じて、最適なパートナーを見つけることをおすすめします。

派遣形態

派遣会社によって、さまざまな雇用形態で人材を派遣しています。 派遣先企業側は、それぞれの派遣形態のメリット・デメリットを把握することが重要です。

雇用形態特徴メリットデメリット
有期雇用派遣・有期雇用契約の派遣社員を受け入れる形態
・3年以上の受け入れができない(3年ルール)
・ほかの雇用形態に比べて人材が豊富
・契約期間が決まっているため、計画的に人材を配置できる
・3年以上の受け入れができない
・後任探しや育成に手間がかかる
・長期的なノウハウが蓄積しづらい
紹介予定派遣・派遣期間終了後、派遣先企業と派遣スタッフ双方の合意があれば、直接雇用へ移行できる形態・派遣期間中に能力や適性を見極められる
・採用ミスマッチを減らせる
・契約期間後に直接雇用に至るとは限らない
・紹介予定派遣を希望する人しか採用できない
無期雇用派遣・無期雇用契約の派遣社員を受け入れる形態
・3年ルールがない
・即戦力となる人材を確保しやすい
・長期定着によるノウハウやナレッジの蓄積が期待できる
・派遣料金が高くなる場合がある
・人材の数が限られる

自社のニーズに合った人材を確保するために、最適な派遣形態を選択できる派遣会社を選びましょう。

関連記事:派遣法の3年ルールとは?企業がとるべき対策と例外ケースについて

対応職種

派遣会社によって得意とする職種、対応可能な職種は異なります。 事務職や営業職など、幅広い職種に対応している総合型派遣会社もあれば、ITエンジニアや製造業など専門性の高い職種に特化した専門型派遣会社もあります。

自社のニーズに合った人材を派遣してもらうために、派遣会社がどのような職種の経験やノウハウを持っているのか、事前に確認しましょう。

なお、派遣会社の対応職種には、下記のようなものが挙げられます。

職種詳細
事務職一般事務、営業事務、経理事務など、企業のオフィスワーク全般を担う
営業職企業の製品やサービスを顧客に提案し、販売する業務を担う
ITエンジニアシステム開発、ネットワーク構築、Webサイト制作など、IT関連の業務全般を担う
製造業工場での組立、検査、梱包など、製品の製造に関わる業務を担う
販売・サービス小売店での接客販売、飲食店でのホール・キッチンスタッフ、コールセンターなど、顧客と接する業務を担う

登録スタッフ数

登録スタッフ数は、その派遣会社に登録しているスタッフの人数を指します。登録スタッフ数が多いということは、それだけさまざまなスキルや経験を持った人材プールから、派遣先企業のニーズに合った人材を派遣できる可能性が高いといえます。

ただし、登録スタッフ数が多いからといって、求める人材に出会えるわけではありません。派遣先企業のニーズに合致した人材をどれだけ効率的に紹介できるか、という派遣会社のマッチング能力も重要です。

また、登録スタッフ数が多い場合でも、専門性の高い分野やニッチなスキルを持った人材が不足しているケースもあります。必要な人材を確保できるかどうか、事前に派遣会社とすり合わせておくことが肝要です。

対応エリア

派遣会社を選ぶ際には、希望する勤務地に対応しているかも重要なポイントです。例えば、全国に支店を持つ大手派遣会社であれば、対応エリアが広い傾向があります。一方、地域密着型の派遣会社であれば、対応エリアは限定的になる場合が多いでしょう。

特定の地域に事業所を構えている場合は、そのエリアに強い派遣会社を選ぶと、より地域に密着した採用活動ができる可能性が高まります。自社の希望勤務地を踏まえて、派遣会社がどのエリアに対応しているか確認しましょう。

派遣社員へのサポート体制

サポート体制が整っている派遣会社を選ぶことで、派遣社員は安心して業務に集中できるようになります。スキルアップ研修をおこなっている場合は、優秀な人材と巡り合える可能性も高まるでしょう。

確認すべきサポート体制の例は、以下のとおりです。

  • キャリアカウンセリング
  • スキルアップ研修
  • 福利厚生サービス
  • 就業中のフォロー体制
  • トラブル発生時の対応

派遣会社のサポート体制によって、派遣社員の自社への貢献度が変わってくる可能性があります。派遣会社を選ぶ際には、どのようなサポート体制があるのか、事前に確認しておきましょう。

まとめ

派遣会社を選ぶ際には、マージン率だけにとらわれず、自社のニーズに合った会社を選ぶことが重要です。 派遣会社を選ぶときは、自社ニーズへの対応やフォローアップ体制にも注目しましょう。

業務内容や求める人材像に合致した人材を雇用できるか、有期雇用派遣・無期雇用派遣・紹介予定派遣など希望する雇用形態に対応しているか、といった要素も大切です。

これらの要素を総合的に判断し、最適な派遣会社を選び、事業の成功につなげましょう。


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監修者
緒方瑛利(ロームテック代表)

プロフィール
1989年北海道むかわ町生まれ。民間企業に入社後、総務・IR広報業務に従事したのち経済団体に転職。融資や創業相談、労働保険事務組合を担当し2019年に社会保険労務士試験に合格。2020年にITに強い社労士事務所としてロームテックを開業。社労士向けのエクセルセミナーや労働保険社会保険に関する情報を発信している。