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派遣社員は直接雇用できる!メリットや流れ、注意点を解説

企業の競争力強化には、優秀な人材の確保と定着が重要です。国も推奨する派遣社員の直接雇用は、業務を任せている優秀な派遣社員に、長期的に働いてもらうための有効な手段となります。

派遣社員の直接雇用には、採用コストの削減、即戦力人材の確保、組織への定着率向上、育成コストの抑制、社内文化へのスムーズな適応など、企業にとって多くのメリットがあります。

ただし、通常の直接雇用とは手続きが異なるため、正しい理解が必要です。

本記事では、人材派遣と直接雇用の違いや、派遣社員を直接雇用するメリット・デメリット、流れなどを詳しく解説します。

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人材派遣と直接雇用の違い

直接雇用と派遣社員の違い

人材派遣とは、派遣会社と雇用契約を結んだ派遣社員を、派遣先企業に派遣し、仕事に従事させる雇用形態です。

一方、直接雇用は、企業と労働者が直接雇用契約を締結する雇用形態になります。

人材派遣と直接雇用の主な違いは、以下のとおりです。

項目人材派遣直接雇用
雇用主派遣会社就業先企業
雇用契約派遣会社と派遣社員の間で、労働条件(賃金、労働時間、休日、業務内容など)を定めた雇用契約を締結企業と労働者の間で、労働条件(賃金、労働時間、休日、業務内容など)を定めた雇用契約を締結
賃金・福利厚生派遣会社が定めた給与体系、福利厚生制度に基づき、賃金や福利厚生が支給される(派遣先企業の福利厚生が提供されるケースもある)就業先企業が定めた給与体系、福利厚生制度に基づき、賃金や福利厚生が支給される
指揮命令派遣先企業就業先企業
労働者保護の責任範囲派遣会社および派遣先企業就業先企業(労働者の安全や健康に配慮し、労働者の権利を守るための措置を講じる必要がある)

人材派遣とは

人材派遣は、派遣会社と派遣社員が雇用契約を結ぶため、雇用主は派遣会社です。派遣会社が派遣社員に給与を支払い、社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険)の加入手続きを行います。

一方、業務の指揮命令については、就業先である派遣先企業が担います。

メリットデメリット
・一時的な人材不足を解消できる
・専門性の高い人材を確保できる
・採用コストや採用時間が軽減される
・社員がコア業務に注力できる
・契約で定めた業務しか依頼できない
・派遣期間に制限がある
・選考できない
・依頼できない業務がある(派遣禁止業務)

人材派遣については、以下の記事で詳しく解説しています。

人材派遣とは?メリットや注意点、活用方法をわかりやすく解説

直接雇用とは

雇用形態の種類

企業と労働者が直接雇用契約を締結する直接雇用には、正社員、契約社員、アルバイト・パートといった形態があります。このなかで正規雇用なのは正社員のみです。

雇用形態特徴
正社員一般的には以下の従業員
・雇用期間の定めがない
・所定労働時間がフルタイムである
・直接雇用である
※近年では「多様な正社員」もあり
契約社員企業と労働者の間で、一定の期間を定めて雇用契約を結ぶ従業員
アルバイト・パート正社員より労働時間が短く、一般的にはシフト制で働く従業員

直接雇用の場合、就業先企業が雇用主として給与を支払い、社会保険の加入手続き、業務の指揮命令を実施します。直接雇用のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・長期的な人材確保が可能になる
・企業文化や価値観の共有を促進できる
・社員のモチベーションやエンゲージメントを高めやすい
・採用活動や人事労務管理にコストがかかる
・雇用調整の柔軟性が低下する

労働者派遣法の3年ルールと直接雇用

労働者派遣法では、派遣先企業における正社員雇用の機会をなるべく阻害しないようにする観点から、「派遣先企業の同一の事業所が派遣社員を受け入れられる期間」「同一の派遣社員を同一の組織単位で受け入れられる期間」を最長3年間としています。

前者を「事業所単位の期間制限」、後者を「個人単位の期間制限」といい、これらはあわせて「派遣法の3年ルール」と呼ばれています。3年を超える最初の日が「抵触日」です。

事業所単位の期間制限は、期間制限の日の1ヶ月前までの間に過半数労働組合等に意見聴取をすれば延長できますが、個人単位の期間制限は伸ばすことができません。

派遣会社は、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みのある派遣社員に対しては、派遣終了後の雇用を守るために、派遣先企業に直接雇用を依頼する、別の派遣先を派遣社員に紹介するなどの対応(雇用安定措置)を取る義務があります(1年以上3年未満の見込みの人は努力義務)。

派遣先企業には、以下の3つの条件すべてに当てはまる場合、派遣社員を直接雇用するように努めなければならない法的義務が生じます。

  • 派遣社員が派遣先企業での継続した就労を希望し、派遣会社を通じて直接雇用の依頼があった
  • 対象の派遣社員が、自社の同一組織内で1年以上勤務している
  • 派遣の受け入れ期間終了後に、継続して同一の組織単位で同じ業務に労働者を従事させる目的で雇い入れようとする

これらの条件を満たすケースは、決して珍しいものではありません。

個人単位の期間制限が迫っている場合は、派遣会社と早めに相談し、スムーズに直接雇用できるようにしておくことが重要です。

3年ルールについては、以下の記事も参考にしてください。

派遣法の3年ルールとは?企業がとるべき対策と例外ケースを解説

派遣社員の直接雇用は違法ではない

派遣社員の直接雇用は違法にはならず、派遣先企業はコンプライアンスを遵守しながら長期的に優秀な人材を確保できる方法です。

労働者派遣法では「派遣会社は正当な理由なく、派遣社員が派遣会社との契約終了後に派遣先と雇用契約することを禁じてはならない」と定めています。

直接雇用に対して派遣社員の同意がとれれば、直接雇用に移行することが可能です。

派遣社員の直接雇用は国が推奨している

派遣社員の直接雇用は国も推奨しており、派遣先企業や派遣会社に対して、さまざまな義務を課しています。

例えば、派遣先企業へは雇用努力義務や社員募集の提供義務、派遣会社へは雇用安定措置などが挙げられます。

派遣先企業への雇用努力義務

同一の業務に1年以上派遣社員を受け入れていた派遣先企業が、引き続き同一の業務に労働者を雇い入れようとする場合には、それまで従事していた派遣社員を遅滞なく雇い入れるよう努めなければなりません。

雇い入れの努力義務が生じるのは、以下の要件を満たす派遣社員です。

  • 派遣実施期間が経過した日までに、派遣先企業に雇用されて同一の業務に従事することを希望する旨を派遣先企業へ申出
  • 派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に派遣会社との雇用関係が終了

これは、派遣先企業が労働者を雇用しようとする際の優先雇用の努力義務です。

派遣会社への雇用安定措置

派遣会社は、派遣就業見込み3年の継続就業を希望する有期雇用の派遣社員に対して、以下いずれかを実施することが義務付けられています。

  • 派遣先企業への直接雇用の依頼
  • 新たな派遣先企業の提供 (※能力、経験等に照らして合理的なものに限る)
  • 派遣会社での無期雇用
  • その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣など)

派遣会社は、派遣社員が希望する措置を講じるよう努めなければなりません。そのため、派遣社員が直接雇用の申込みを希望する場合は、実現を目指して支援する流れになります。

派遣先企業による社員募集の提供義務

派遣先企業は、派遣社員に対し、募集情報を提供することが義務付けられています。

正社員を募集したいときに継続して1年以上受け入れている派遣社員がいる場合には、その派遣社員が正社員として就職する機会が得られるよう、募集情報の周知が必要です。

また、派遣先企業で正社員に限らず労働者を募集したいときに、派遣先企業の同一の組織単位の業務に継続して3年間受け入れる見込みがある派遣社員がいて、かつ派遣会社から直接雇用の依頼があった場合には、その派遣社員が直接雇用で就職する機会が得られるよう、募集情報を提供しなければなりません。

派遣社員を直接雇用するメリット

派遣社員を直接雇用するメリット

これまで派遣社員として活躍してきた人材を直接雇用すると、企業はさまざまなメリットを得られます。

例えば、3年ルールに縛られない、早期離職のリスクが軽減する、業務範囲が拡大する、柔軟性が向上するなどがあるでしょう。

この章では、派遣社員を直接雇用するメリットを詳しく解説します。

3年ルールに縛られない

有期雇用派遣では3年という受け入れ可能期間の制限があり、優秀な派遣社員を継続して活用したい場合でも、3年以上受け入れられませんでした。

直接雇用することで、それ以上に長く活躍してもらえるようになります。

早期退職のリスク軽減

派遣社員の直接雇用には、人材採用時に起こりがちな「ミスマッチによる早期退職のリスク」が発生しにくいメリットがあります。

新たに正社員を採用する場合、企業文化や仕事内容との相性が合わず、早期に退職してしまうケースもあるでしょう。

派遣社員としてすでに勤務経験があれば、派遣先企業側の雰囲気や業務内容を把握しているため、直接雇用に移行してもミスマッチによる早期退職にはつながりにくくなります

業務範囲の拡大と柔軟性向上

派遣先企業は、派遣社員に派遣契約内容を超える業務をさせることができません。また、人材派遣では港湾運送業務や建設業務、警備業務など禁止されている業務もあります。

そのため、高いスキルや豊富な経験をもっていても、派遣社員として働く以上は業務範囲を柔軟に拡大できなくなります。

直接雇用であればそうした制限がないため、長期的な視点に立った人材配置や組織変更などにも柔軟に対応できるでしょう。

派遣禁止業務については、以下の記事も参考にしてください。

派遣の禁止業務とは?禁止理由や罰則、例外業務について解説

組織への帰属意識の向上

組織への帰属意識とは「自分は組織の一員である」という意識であり、企業への貢献意欲や愛着、責任感を指します。

帰属意識の高い社員は、組織目標の達成に向けて積極的に行動し、困難な状況にも前向きに取り組む傾向にあります。

派遣社員の場合、雇用契約は派遣会社との間で行われるため、組織の一員である自覚が薄れがちです。直接雇用することで、企業の一員としての自覚が強まり、より高い責任感や貢献意欲をもてるでしょう。

採用コストの削減

派遣社員を直接雇用すると、採用活動にかかるコストを削減できる可能性があります。

新たに正社員を採用する場合、求人広告の掲載費用や、採用イベントの開催費用、面接官の人件費など、多くのコストが発生しますが、派遣社員の直接雇用であればそうしたコストがかかりません

また、派遣社員を直接雇用すると、これまで派遣会社に支払っていた派遣料金(マージン)が不要になります。

派遣料金は、派遣社員の賃金や社会保険料とは別に発生するコストであり、長期的に見ると大きな負担となる可能性があります。

キャリアアップ助成金の活用が可能

厚生労働省は派遣社員の直接雇用を推奨しており、キャリアアップ助成金制度を用意しています。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や待遇改善を行う企業に対し、国が金銭的に支援する制度です。

助成金の活用により、企業は直接雇用にかかるコストを削減しつつ、よりスムーズに従業員のキャリアアップと人材の確保を実現できます。

派遣社員を直接雇用するデメリット

派遣社員を直接雇用するデメリット

派遣社員の直接雇用にはさまざまなメリットがありますが、人材管理コストや労務管理の負担増加などのデメリットもあります。

デメリットを把握したうえで、直接雇用を検討する必要があります。

人材管理コストの増加

派遣社員を直接雇用にする場合、人材管理コストの増加は無視できません。

直接雇用はこれまで派遣会社に支払っていた派遣料金がなくなる一方、社会保険料や福利厚生費などを負担する必要が出てきます

具体的にかかる人材管理コストは、以下のとおりです。

人材管理コスト内容
社会保険料健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険
福利厚生費退職金制度、住宅補助、家族手当など
労務管理費労働時間管理、休暇管理、健康管理など
教育訓練費階層別研修、専門スキル研修など

直接雇用を検討する際には、これらのコスト増加を見込んだうえで、自社の経営状況とバランスをとることが重要です。

労務管理の負担増加

派遣社員を直接雇用する場合、企業は上記の人材管理コスト以外にも、労務管理の負担が増える課題に直面します。

これは、従業員一人ひとりの労働時間管理、休暇管理、健康管理などを適切に行い、法令に準拠した対応を行う必要が出てくるためです。

また、労務管理にかかる業務量は、直接雇用する社員が多いほど増大する可能性があります。労務管理システムを導入する他、社労士といった専門家へ相談するなど、負担軽減策を検討することが重要といえるでしょう。

雇用の柔軟性低下

直接雇用は、派遣社員と比べて雇用調整の柔軟性が低くなるデメリットもあります。

派遣社員の場合、契約期間満了をもって受け入れを終了できますが、直接雇用の場合は、正当な理由なく雇用を終わらせることはできません。

直接雇用への切り替えは、雇用の柔軟性が低下する可能性を考慮しつつ、就業規則などに配置転換の要件を明確に定めるなど、対策を検討しておくことが重要です。

働き方の変化で派遣社員に不満が生じる可能性

柔軟性の高い働き方を希望する派遣社員もいるため、これまでの働き方とは変わることで、窮屈さなど不満を感じてしまう可能性もあります。

特に、雇用形態や業務内容が大きく変わる場合には、フォローを入れることが重要です。

派遣社員を直接雇用へ切り替える流れ

派遣社員を直接雇用へ切り替えるときは、以下の流れで進めるのが一般的です。

  1. 派遣会社との調整
  2. 労働条件の設定
  3. 採用選考と内定通知
  4. 各種手続きの実施
  5. キャリアアップ助成金の活用

各段階を解説します。

1. 派遣会社との調整

派遣社員を直接雇用するにあたって、まずは派遣会社に意向を伝えます。

派遣会社と締結した派遣契約には、基本的に直接雇用を申し出た場合の手続きの仕方(有料の職業紹介扱いとするのか、紹介予定派遣とするのか)や、違約金あるいは紹介手数料の発生が記載されています。

事前に確認したうえで連絡を取り、派遣会社との手続き調整を進めましょう

2. 労働条件の設定

次に、直接雇用をする派遣社員の労働条件を設定します。

提示する労働条件の内容は、就業規則の内容に準拠している必要があります。就業規則の内容と異なる労働条件を提示する場合には、就業規則を変更しなければいけません。

設定すべき主な労働条件は、以下のとおりです。

労働条件具体的な内容
契約期間期間の定めあり、なし
就業場所勤務地、配属部署など
業務内容従事する業務の内容
労働時間始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働、休日出勤など
休日土曜日、日曜日、祝日、その他会社が定める休日など
休暇年次有給休暇、夏季休暇、年末年始休暇、慶弔休暇、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇など
賃金基本給、諸手当、賞与の有無や支給時期、計算方法など
試用期間試用期間の有無、期間、労働条件など(紹介予定派遣の場合は設定不可)
退職に関する事項定年制、継続雇用制度、自己都合退職の手続きなど
その他社会保険の加入状況、雇用保険の適用など

雇用主となる企業は、これらの労働条件をまとめた「労働条件通知書」を、書面により交付することが法律で義務付けられています

口頭のみで説明する、労働条件通知書の内容が不十分といった場合には、トラブルに発展する可能性があります。

3. 採用選考と内定通知

雇用条件を設定したら、派遣社員に提示して直接雇用の意向をヒアリングします。

派遣社員が直接雇用を希望する場合、あらためて面接や書類選考などを行い、適性や能力、自社での長期的な活躍の可能性を判断します。

採用が決定した場合は、労働条件や入社日などを明記した内定通知書を書面で交付しましょう。内定通知書は、採用決定の証拠となる重要な書類のため、内容に虚偽や不明瞭な点がないように、慎重に作成する必要があります。

4. 各種手続きの実施

内定通知をした後は、直接雇用に必要な各種手続きを行います。

主な手続きと必要書類は以下のとおりです。

手続き目的必要書類備考
雇用契約の締結雇用契約書労働条件(賃金、労働時間、休日など)を明記し、双方署名・捺印が必要
社会保険の加入手続き社会保険被保険者資格取得届雇用保険被保険者資格取得届 企業が管轄の年金事務所や公共職業安定所(ハローワーク)に提出
住民税の特別徴収給与所得者の住民税特別徴収に関する事項通知企業が従業員の住所地の市区町村に提出
源泉徴収票の発行源泉徴収票前職の源泉徴収票が必要

これらの手続きを終えれば、派遣社員を自社の従業員として迎えられます。

5. キャリアアップ助成金の活用

キャリアアップ助成金にはさまざまなコースがあり、有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換した場合に支給される「正社員化コース」では、以下のような助成金が支給されます。

直接雇用前の派遣社員の契約形態中小企業の場合 (1人あたり)大企業の場合 (1人あたり)
有期雇用80万円60万円
無期雇用40万円30万円
参考:厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内〈令和6年度版〉

派遣先企業が派遣社員を直接雇用した場合は、上記の助成金に1人あたり28.5万円が加算されます。

助成金を受給するには、一定の要件を満たしたうえで、必要な手続きを行う必要があります。詳細は厚生労働省のWebサイトを参照してください。

派遣社員の直接雇用を検討する際のポイント

派遣社員の直接雇用は、双方のメリットをよく吟味したうえで決定することが重要です。

業務内容と派遣社員の適性、給与や福利厚生の見直し、将来的なキャリアパスの提示など、直接雇用後の状況を具体的にイメージし、双方が納得できる条件を整備することが、その後の良好な関係構築につながります

業務内容と適性の再確認

直接雇用を検討する際には、対象となる派遣社員の業務内容と適性について再確認する必要があります。

業務内容については、例えば「現在の業務内容が直接雇用に適したものか」「将来的にも当該派遣社員のスキルや経験を活かせる業務があるのか」「欠員補充ではなく、増員として問題ないか」などを確認します。

3年を超えて従事するプロジェクトの場合は、労働者派遣法3年ルールの観点から、早めに直接雇用を検討したほうがよいでしょう。

派遣社員の適性については、「現在のスキルや経験が、直接雇用後の業務内容に見合っているか」「企業文化やチームに馴染める性格や能力をもっているか」などを確認します。

これらをあらためて確認しておくと、直接雇用後のトラブルリスクを抑えられます。

給与や福利厚生の調整

直接雇用を検討する際には、派遣社員がこれまでの待遇と比較して納得できる条件を提示する必要があります。

給与は、派遣社員時の時給単価を日給または月給に換算し、企業の給与体系に照らし合わせて決定します。その際、経験や能力を考慮し、適切な等級や職位に設定することが重要です。

賞与や退職金の制度があれば、就業規則に基づいて適用を検討しましょう。

福利厚生は、社会保険への加入が法律で義務付けられています。その他、企業が独自に設定している福利厚生制度があれば、それらを適用するかどうかの検討も必要です。

待遇面で大幅な変更がある場合は、納得を得られるよう事前に説明を行いましょう。

キャリアパスの設計

直接雇用後のキャリアパスの設計も重要です。

具体的には、昇進・昇格の道筋を明確化し、どのような成果をあげれば、どの役職に就けるのか、具体的な評価基準を明確に決める必要があります。直接雇用後の道筋が明確であれば、派遣社員も自身のキャリア目標を描きやすくなるでしょう。

また、派遣社員がその目標にたどり着けるよう、社内外研修や資格取得支援など、成長機会を提供する計画を立てることも重要です。

派遣社員の直接雇用に関する注意点

派遣社員を直接雇用する際には、法律やルールの遵守が欠かせません。特に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

労働基準法の遵守

直接雇用した派遣社員には、労働条件の最低基準を定めた労働基準法が適用されます。

直接雇用を機に、あらためて労働時間や休日、賃金などの各規定について確認しましょう。

雇用契約書の作成

雇用契約書は法律上の作成義務はありませんが、後のトラブルを避けるために作成しておきましょう。雇用契約書の作成により、労働条件が明確化でき、労働者と使用者双方の権利義務をはっきりさせられます

雇用契約書に盛り込まれる内容は、労働条件通知書と同様のものであるため、労働条件通知書と雇用契約書を兼用して作成するケースもあります。

無期転換ルールへの意識

無期転換ルールとは、有期雇用契約の更新時に同一の企業における通算契約期間が5年を超える場合に、労働者側から申請することで、期間の定めのない「無期雇用契約」に転換されるルールです。

派遣社員を有期雇用契約で雇い入れた場合は、5年後に無期雇用契約を結ぶ必要が生じる可能性があります。

無期転換ルールについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

【社労士監修】無期転換ルールとは?適用条件や対策を解説

離職後1年以内の派遣社員の受け入れ禁止

労働者の待遇悪化を防ぐために、労働者派遣法により、離職後1年以内である労働者の派遣社員としての受け入れは禁止されています。

仮に、派遣社員が直接雇用に切り替えられた後、すぐに派遣社員に戻りたいといった希望が出たとしても、そのような対応はできません。

派遣社員の直接雇用を見据えるなら「紹介予定派遣」の検討を

将来的に派遣社員を直接雇用する可能性が高い場合は「紹介予定派遣」の活用がおすすめです。特徴やメリット、活用ポイントを紹介します。

紹介予定派遣の仕組み

紹介予定派遣の仕組み

紹介予定派遣とは、派遣先企業が派遣社員を直接雇用することを前提に行われる派遣形態です。

派遣先企業と派遣社員は派遣期間中にお互いの適性を判断し、問題がなければ派遣期間終了後に直接雇用へと移行します。

紹介予定派遣の流れは以下のとおりです。

  1. 派遣先企業と派遣会社間で契約を締結
  2. 派遣先企業が書類選考や面接を実施
  3. 派遣期間開始(最長6ヶ月)
  4. 派遣先企業と派遣社員の双方に直接雇用の意思がある場合、直接雇用を締結

紹介予定派遣は、事前に書類選考や面接を行う点や、派遣期間が6ヶ月と短い点が通常の派遣と異なります。

紹介予定派遣のメリットとデメリット

紹介予定派遣は、事前の書類選考や面接を通して自社により適した人材を直接雇用できる可能性が高まります

直接雇用時の労働条件は紹介予定派遣前に提示するため、実際に直接雇用するときに条件面での齟齬が起こりにくく、スムーズに進められます。

ただし、派遣先企業が直接雇用したいと考えていても、派遣社員に拒否された場合は、採用できません。

また、派遣期間中に支払う賃金を含むコストが大きな負担になることや、採用決定時に紹介手数料(採用する人材の理論年収の20~35%)が発生することにも留意が必要です。

紹介予定派遣の活用ポイント

紹介予定派遣では、評価基準を設定し、派遣会社と求める人物像について情報を共有しておくことが重要です。これにより、ミスマッチを防げるようになります。

派遣期間中は信頼関係を構築できるよう、派遣社員と定期的に面談や意見交換を行い、疑問や不安解消を図りましょう。

派遣社員のキャリアプランや希望をヒアリングし、直接雇用後のキャリアパスや待遇、キャリアアップの機会を具体的に説明するとともに、企業理念やビジョンを共有し、企業文化への理解を深めてもらうことも重要です。

紹介予定派遣については、以下の記事も参考にしてください。

紹介予定派遣とは?仕組みや通常の派遣との違い、注意点を解説

派遣社員の直接雇用に関してよくある質問

派遣社員の直接雇用では、さまざまな質問が聞かれます。

この章では、直接雇用になった場合の給与や待遇の変化、派遣社員に拒否された場合の対応、注意すべきトラブル事例について解説します。

直接雇用になると、給与や待遇はどう変わる?

派遣社員を直接雇用する場合、給与や待遇は自社の規定に沿って決定する必要があります。例えば、時給制だった派遣社員を月給制の正社員にする方法が考えられます。

給与や待遇は社員のモチベーションや定着率に大きく関わるため、既存社員との不合理な待遇差が生じないように注意しましょう。

派遣社員が直接雇用を拒否する場合の対応は?

直接雇用は派遣先企業と派遣社員の双方の合意で成立するため、強制はできません

派遣社員から直接雇用を断られた場合、派遣先企業は労働者を募集しつつ、別の派遣社員を派遣してもらうなどの方法があります。

直接雇用する際に注意すべきトラブル事例は?

直接雇用後によくあるトラブルは、給与や労働時間、休日などの労働条件が異なるといった内容です。

例えば、派遣社員時に柔軟な時間設定で働いていたものの、直接雇用後は会社の規定に沿った労働時間になり、以前より働きづらくなってしまったというケースが考えられます。

また、就業規則の周知不足や既存の従業員との距離感が近くなることによるハラスメントの発生も挙げられます。

まとめ

派遣社員の直接雇用は、早期離職のリスク軽減や業務範囲の拡大・柔軟性向上などのメリットがある一方、人事管理コストの増加や雇用の柔軟性の低下といったデメリットもあります。

また、直接雇用へ移行する際には、労働条件の明確化や各種法令の遵守など、注意すべき点が数多く存在します。思わぬトラブルに発展しないよう、派遣会社や社会保険労務士弁護士などの専門家とよく相談しながら進めることが重要です。

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