- 人材派遣の基本
ハイスキル人材の派遣活用法!コスト効率を高める選択肢
ハイスキル人材の派遣活用は、専門性の高い業務を効率的に推進したい企業の強力な選択肢です。IT・デジタル分野では、厚生労働省の2024年3月公表の調査において、すでに41.9%の企業が派遣や外注を活用しています。
コスト効率を考えると、時短派遣や在宅派遣の形態で、高度なスキルを必要なときのみ取り入れる方法がおすすめです。
本記事では、ハイスキルの派遣社員の特徴から活用するメリット、活用パターン、成功事例、具体的なステップ、活用するときのポイント、派遣会社の選び方まで詳しく解説します。

目次
ハイスキルの派遣社員とは
ハイスキルの派遣社員は、高度な専門知識や技術をもち、短時間で効率的に成果を出せる人材です。
経験豊富な専門職としての実績があり、リーダーシップや高度なビジネススキルを備えている、チームプレイ力に優れている、継続的な成長意欲があるなどの特徴をもっています。
昨今は特にIT・デジタル分野でハイスキル人材を採用以外で確保するケースが増えてきており、厚生労働省の2024年3月公表の調査では、企業のIT・デジタル人材不足への対応として、41.9%もの企業が業務委託や外注、派遣契約を活用していることがわかっています。

引用:厚生労働省『IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業 調査報告書 別添6_企業アンケート_単純集計p.3』
ハイスキルの派遣社員を活用するメリット
ハイスキル人材を派遣で活用すると、企業は専門スキルの一時的な補完ができる、採用コスト・教育コストの削減が図れる、即戦力の柔軟な活用により生産性が向上するなどのメリットが得られます。
自社の課題解決にどう役立つか、具体的なメリットを把握しましょう。
専門スキルの一時的な補完
特定のプロジェクトや繁忙期には、一時的に高度な専門スキルをもつ人材が必要になることがあり、ハイスキルをもつ派遣社員の活用が効果的な解決策となります。
主な活用シーンの例は、以下のとおりです。
- 決算期の経理業務強化
- 新システム導入時の専門エンジニア補強
- マーケティングキャンペーン実施時の専門家登用
人材派遣は、必要なときに必要な分だけ人材を確保できます。正社員採用とは異なり、プロジェクト終了後も人件費が継続する心配がありません。
また、派遣会社の豊富な人材ネットワークを活用すると、自社での採用活動より迅速に適任者を見つけられます。突発的な専門業務の発生時にも、素早く対応できる体制を整えることが可能です。
採用コスト・教育コストの削減
正社員を1人採用するには、平均100万円前後のコストがかかるといわれています。これには求人広告費や採用担当者の人件費、面接時間のコスト、入社後の研修費用、OJT期間中の生産性低下分などの費用が含まれます。
ハイスキル人材を派遣で活用すれば、これらのコストを削減できます。特に以下のようなメリットがあるでしょう。
- 採用プロセスの簡略化による時間短縮
- 即戦力投入による教育期間の省略
- 専門スキル習得のための研修費用の削減
- ミスマッチによる再採用コストの回避
特に、高度な専門性が求められる業務では、自社で人材を育成するより、すでに必要なスキルをもった派遣社員を活用するほうが効率的です。
財務・法務・IT開発などの分野では、専門知識の習得に時間がかかることを考えると、ハイスキル人材の派遣活用は時間とコストの両面で大きなメリットをもたらします。
即戦力の柔軟な活用による生産性向上
ハイスキル人材の派遣活用は、生産性向上において大きな効果をもたらします。豊富な経験と専門知識をもつ人材は、業務への立ち上がりが早く、短時間で質の高い成果を期待できます。
週3〜4日、1日6時間などのフレキシブルな勤務形態でも、効率的に業務を遂行できるでしょう。
時短勤務でも高い成果を出せるため、人事コストの最適化も可能です。また、派遣社員は過去の経験から培った知見を活かし、既存業務の非効率な部分を発見・改善する提案もできる可能性があります。
ハイスキルの派遣社員の活用パターン
ハイスキル人材の派遣活用は、企業のニーズに合わせてさまざまな形態が可能です。例えば、時短派遣やパートタイム派遣、在宅派遣、プロジェクト単位の派遣などがあるでしょう。
人事や経理、営業など、部門別の活用パターンもさまざまです。業務の分担を適切に行えると、社内リソースを効率的に活用しながら専門性の高い業務を進められます。
活用パターンを把握しておくと、自社に合った活用方法のイメージに役立てられます。
時短派遣、パートタイム派遣
時短派遣やパートタイム派遣は、コスト効率と専門性を両立させられる選択肢です。一般的には、以下のような活用パターンが効果的です。
ピークタイム集中型の活用例 | 専門業務の時間単位切り分け |
・朝夕の繁忙時間帯のみ配置(10時〜15時など) ・週2〜3日の集中配置で専門業務を担当 ・月5〜10日の集中配置(月次決算期間のみなど) | ・経理部門:月次決算時のみ高度な会計知識をもつ派遣社員を配置 ・営業部門:提案資料作成時のみデザインスキルの高い人材を活用 ・人事部門:採用ピーク時のみ面接官経験者を配置 |
育児や介護などの理由でフルタイム勤務ができなくても、高いスキルと経験をもつ人材は多くいます。そのポテンシャルを活かせる業務設計ができれば、限られた時間でも大きな成果を期待できます。
時短派遣については、以下の記事も参考にしてください。
在宅派遣
在宅派遣は、テレワークと組み合わせることで採用力と生産性を大きく向上させられる選択肢です。地理的制約が解消されるため、派遣社員の応募率が上がりやすく、場所を選ばないハイスキル人材の確保が容易になります。
運用パターンには、以下2種類があります。
- 完全在宅で業務を遂行する「フルリモート勤務(常時型在宅勤務)」
- 週に数日出社、残りは在宅勤務する「ハイブリット勤務(随時型在宅勤務)」
在宅派遣の導入にあたっては、業務の明確な切り分けや成果指標の設定、オンラインでのコミュニケーション手段の確保、セキュリティ対策などが必要です。
適切に運用できると、ハイスキル人材の時間的制約(育児・介護など)を緩和し、これまでアクセスできなかった優秀な人材層の活用が可能になります。
在宅派遣については、以下の記事でも詳しく解説しています。
プロジェクト単位
プロジェクト単位でのハイスキル人材の派遣活用は、期間限定の目標達成に大きな効果を発揮します。「ある目標を達成するための複数の業務の集合体」であるプロジェクトには、短期集中型の専門人材が最適です。
プロジェクト単位活用のメリットは、以下のとおりです。
- スピーディな人材確保が可能
- 必要な期間だけの契約でコスト効率が高い
- 専門知識をもったプロ人材が即戦力として参画
具体的な活用パターンには、以下が挙げられます。
活用シーン | 具体例 |
一時的な業務過多への対応 | ・繁忙期の集中業務サポート ・特定プロジェクト立ち上げ期間のみの増員 |
特定スキル獲得のための短期プロジェクト | ・新規事業立ち上げ時の市場調査、戦略立案 ・システム導入、改修時の専門家活用 |
社内リソースが不足する専門領域の補完 | ・広報PR、マーケティング戦略立案 ・財務分析、経営コンサルティング |
プロジェクト終了後は契約を更新せず、また新たな課題に応じて別のハイスキル人材を活用することも可能です。
部門別の活用例(人事・経理・営業・ITなど)
各部門におけるハイスキル人材の派遣活用は、それぞれの専門性を活かした形で最適化することが重要です。例えば、以下の内容が挙げられます。
部門 | 活用例 |
人事部門 | 人事制度設計のプロジェクトへの参画や研修プログラム開発など。特に制度改革期には、外部視点をもつ専門家の知見が有効 |
経理部門 | 決算期の集中業務や税務申告時期などの繁忙期に限定した活用。財務分析やシステム導入時のスペシャリストとして専門知識を補完する役割も担える |
営業部門 | 特定業界に精通した営業サポート役として配置。業界特有の商習慣や専門用語に精通した人材が即戦力となる |
IT部門 | プロジェクト単位でのエンジニア派遣、DX推進時の専門コンサルタントとしての参画、セキュリティ対策やクラウド移行における技術者としての活用 |
いずれの部門でも、業務の繁閑に合わせたハイスキル人材の戦略的配置が可能です。自社社員がコア業務に集中できる環境構築と専門スキルの相乗効果により、組織全体の生産性向上が期待できます。
ハイスキルの派遣社員を活用した成功事例
人材派遣を導入する前には、実際の成功事例を参考にすると、期待できる効果をイメージしやすくなります。
この章では、スマートキャリアでハイスキルの人材派遣を受けて成功した事例を紹介します。
経理のハイスキル人材活用でこれまで以上の強固な体制を構築
ある上場企業では、子会社設立にともなう経理業務の複雑化に対応するため、ハイスキル人材の派遣活用を決断しました。求めたのは、以下の要件です。
- 上場企業特有の経理フローへの深い理解
- 正確性と期日厳守の徹底
- 臨機応変な対応力
採用されたのは、IT業界の一部上場企業で経理マネジメント経験をもつエキスパートです。週5日9時30分~16時30分の時短勤務という働き方で、繁忙期には勤務時間を調整しています。
コロナ禍で在宅派遣に移行した際も、派遣先企業では日々のオンラインコミュニケーションを徹底し、チャットやWeb会議を活用していました。その結果、オフィス勤務と変わらない業務効率を維持できたそうです。
派遣社員は高いパフォーマンスを出してくれるため、派遣先企業からは業務の幅を広げていきたいとの意向が聞かれました。また、ハイスキル人材は社会人としての立ち居振る舞いが素晴らしく、若手社員の良いお手本にもなったそうです。
新プロジェクトに合わせた時短派遣活用でスピーディな採用
新プロジェクト開始により、数十名規模の人材が必要になった企業の事例です。自社採用では時間的制約があり、以下の課題に直面していました。
- 短期間で週5日勤務可能な人材の大量採用が必要
- 社風に合った人材を低コストで迅速に確保したい
- 長期的に活躍できる優秀な人材が欲しい
派遣先企業からは、企業の社風やニーズに合わせ、スピーディに適切な人材の紹介を受けられたとのお声が聞かれています。
ハイスキル人材は、マニュアルが未整備の状況でもプロジェクトの本質を理解し、自ら判断して行動してくれたようです。アシスタントとしての役割を認識し、主体的に業務に取り組む姿勢が高く評価されました。
時短勤務であっても高いスキルと即戦力をもつ人材は多いため、働く時間の短さだけで判断すると、貴重な人材獲得の機会を逃してしまうでしょう。
ハイスキル人材を派遣で受け入れる具体的ステップ
ハイスキル人材を受け入れるためのステップは、以下のとおりです。
- 必要なスキル・人材要件の定義
- 派遣会社との打ち合わせ
- 派遣会社による人材選考
- 受け入れ準備
- ハイスキル人材の受け入れ
導入前に、実際の導入プロセスとタイムラインを把握しておきましょう。
1. 必要なスキル・人材要件の定義
ハイスキル人材を派遣で活用する第一歩は、明確な人材要件の定義です。具体的には以下のステップで進めていきます。
- 業務の棚卸しをして、ポジションの役割や成果目標を明確にする
- 要件を洗い出す
- 必須要件と歓迎要件で整理する
- 採用担当者と認識をそろえる
順を追って整理すると、派遣会社の認識とのブレを防ぎ、自社に適した人材を選考してもらいやすくなります。
採用要件の作り方については、以下の記事もご覧ください。
2. 派遣会社との打ち合わせ
ハイスキル人材の要件が明確になったら、派遣会社との具体的な打ち合わせを行います。以下のポイントを明確に伝えることが大切です。
- 業務内容と求めるスキルレベルの詳細
- 就業時間や勤務形態(時短、在宅などの希望条件)
- プロジェクト期間や想定される契約期間
- 予算感とコスト上限
打ち合わせの際には、派遣会社の特徴(専門分野や保有人材の傾向)についても質問し、自社のニーズとマッチするか確認しましょう。優れた派遣会社は、業務内容や企業文化を理解したうえで最適な人材を提案します。
3. 派遣会社による人材選考
派遣会社はハイスキル人材の選考において一般的に、スキルや経験、人柄と適応性などを踏まえて判断します。ハイスキル人材の場合、特に専門性の評価が厳密に行われますが、社風との相性も重視されるでしょう。
なお、派遣社員の選考は、雇用契約を結ぶ派遣会社が行います。派遣先企業が選考することは「派遣特定行為」として労働者派遣法へ抵触してしまうため、注意が必要です。
該当する行為には、事前面接の要請・実施、履歴書や職務経歴書の提出の要求、個人情報の聞き出しなどが挙げられます。詳しくは以下の記事も参考にしてください。
4. 受け入れ準備
受け入れるハイスキル人材が決定したら、入社前に以下の準備を整えておくことが重要です。これにより、派遣社員が初日から効率的に業務に取り組める環境が整います。
例えば、以下の準備が必要です。
準備項目 | 詳細 |
物理的環境の整備 | ・デスクやPC、名札などの備品を事前に用意 ・社内システムへのアクセス権限の設定 ・必要なソフトウェアのインストール |
情報共有の準備 | ・業務マニュアルや社内規定の準備 ・プロジェクト資料の整理 ・関連部署への受け入れ告知 |
コミュニケーション体制の構築 | ・正社員の派遣社員に対する意識改革 ・懇談会への招待(強制はしない) |
これらの準備を万全にしておくと、ハイスキル人材の能力を十分に発揮しやすい環境となります。特に専門性の高い人材ほど、業務に必要な環境整備が重要です。
派遣社員の受け入れ準備については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
5. ハイスキル人材の受け入れ
ハイスキル人材を派遣社員として受け入れる際は、初日からスムーズに業務を開始できるように環境を整えましょう。
具体的にはオンボーディングを実施し、企業のビジョン・ミッションの共有やプロジェクト目標・位置づけの説明、チームメンバーの紹介と役割の明確化を行います。
特にハイスキル人材の活用で重要なのは、専門性を発揮できる環境です。そのため、初日から必要な情報にアクセスでき、質問できる体制を整えておくことが重要です。
また、定期的な1on1ミーティングを設定し、期待値のすり合わせを行うと、より高いパフォーマンスを引き出せます。
特に、受け入れ後1週間程度は丁寧なフォローを心がけて業務上の障壁を速やかに取り除くと、ハイスキル人材の能力を最大限に活かせる体制を構築しやすくなります。
ハイスキルの派遣社員を最大限活用するための受け入れ体制
ハイスキル人材の能力を引き出すためには、適切な受け入れ体制の構築が不可欠です。社内で業務分担を設計して適切な教育・研修を用意し、社内人材とのシームレスな連携体制を確立しておきましょう。
派遣先企業に必要な受け入れ体制を把握し、ハイスキル人材の能力を活かせる環境づくりに役立ててください。
社内での業務分担の設計
ハイスキル人材の派遣を最大限に活用するには、適切な業務分担の設計が不可欠です。
各人材の強みを活かした役割分担により、派遣社員の分析力やレポート作成能力などの専門スキルを即座に活用しつつ、自社社員がコア業務に集中できる環境が整います。
例えば、自社社員には商品知識が必要なアイデア出し、製造部門との連携業務を行なってもらい、派遣社員には市場調査、競合分析、データに基づくコンセプト設定などを任せる方法があります。
業務を明確に線引きすると、お互いの専門性を尊重しながら効率的な協働が可能となるでしょう。
業務分担設計のポイントは、以下のとおりです。
- 派遣社員の経験、強みを詳細に把握する
- 自社社員にしかできない業務(社内知識が必須の業務)を明確にする
- 両者の業務範囲と連携ポイントを文書化する
- 定期的な業務調整の機会を設ける
これにより、ハイスキル人材の専門性が発揮され、社内の生産性向上につながります。
教育・研修の必要性と効率化
ハイスキル人材の派遣活用では、既存スキルの活用だけでなく、適切な教育・研修が業務効率を大きく左右します。まずは、必要な教育・研修を見極めることが重要です。
実施すべき教育内容には、基本的な社内ルールやセキュリティポリシー、社内独自の業務フロー、自社特有のシステムやツールの使い方などが挙げられます。
専門知識をもっているハイスキル人材でも、自社特有の仕組みについては教育が必要です。効率的な研修実施のコツは以下のとおりです。
- マニュアル化された資料を事前に準備しておく
- チェックリスト形式の研修進捗確認表を活用する
- オンボーディングプラン(派遣社員が早期に組織に馴染み、活躍できるようサポートする仕組みやプロセス)を明確にして最短で戦力化できる体制を整える
これらの取り組みにより、ハイスキル人材のもつ専門性を最短で発揮できる環境が整い、派遣活用の効果を高められます。
自社社員とのシームレスな連携体制の確立
ハイスキルの派遣社員のもつ能力を最大限に活かすには、自社社員との連携体制の構築も重要です。以下3つのポイントを実践しましょう。
ポイント | 詳細 |
定期的なコミュニケーションの場の設定 | 部門間の壁を取り払い相互理解が深まるよう、週1回の定例ミーティングを設け、進捗状況や課題を共有。オンライン・オフライン問わず、派遣社員と自社社員が気軽に情報交換できる環境を整える |
役割と責任の明確化 | 役割分担表を作成し、全員に共有 |
相互評価の仕組み導入 | 一方通行の評価ではなく、派遣社員からも社内体制への意見を積極的に取り入れる仕組みを作る。振り返りミーティングなどを通じて双方向のフィードバックを行うと、より効果的な連携体制が構築できる |
これらの取り組みを通じて、派遣社員と自社社員がお互いの強みを認め合い、補完し合える関係性を構築すると、組織全体のパフォーマンス向上と知識・スキルの共有による相乗効果が期待できます。
ハイスキルの派遣社員を活用するときのポイント
ハイスキル人材の能力を引き出すためには、適切な環境作りが不可欠です。特に、明確な業務目標と成果物の設定、専門性を発揮できる環境づくり、キャリア志向の理解と尊重といった点が重要です。
費用対効果を高めるための具体的な運用ポイントを理解しましょう。
明確な業務目標と成果物の設定
ハイスキル人材の能力を引き出すには、明確な目標設定が必要です。特に以下3つのポイントを押さえましょう。
ポイント | 詳細 |
数値化できる指標の設定 | 「月次決算処理を3日間短縮」「プロジェクト完了率を15%向上」など、専門性を可視化できる具体的KPIを設定。達成状況を定期的に見直し、柔軟に調整 |
時短派遣でも成果を最大化する業務範囲の明確化 | 専門スキルを活かせる業務に集中できるよう、専門業務と定型業務で役割分担を明確にする |
期待値のすり合わせ | 毎週のミーティングで「What(何を)」「When(いつまでに)」「Why(なぜ必要か)」を確認し、やらされ感ではなく、主体的に取り組める環境を整える |
これらの取り組みにより、ハイスキル人材が自分の専門性を最大限に発揮できる環境が整い、たとえ時短勤務でも高い成果を生み出せるようになるでしょう。
専門性を発揮できる環境づくり
ハイスキル人材が真価を発揮するためには、適切な環境づくりが不可欠です。
まず重要なのは、契約書に具体的な業務内容と共に適切な権限を明記することです。これにより、派遣社員は自身の専門性を活かした判断を迅速に行えます。
具体的な環境整備のポイントは、以下のとおりです。
- 一定範囲内での意思決定権を付与し、専門的判断をスムーズに業務に反映する
- 細かな指示待ちではなく、目標に向けて自ら考えて行動できる裁量を確保する
- 週次や月次での振り返りミーティングを設定する
権限付与の例としては、以下が挙げられます。
分野 | 権限付与例 |
経理 | 50万円未満の支出判断、月次レポート作成権限 |
IT開発 | システム仕様の一部決定権、外部ベンダー選定 |
マーケティング | SNS投稿内容決定、小規模プロモーション実施 |
このような環境があると、ハイスキル人材は自身の専門知識を最大限に活用でき、派遣先企業にとっても高い費用対効果を得られやすくなります。
キャリア志向の理解と尊重
ハイスキル人材は明確なキャリアビジョンをもっていることが多いため、その志向を理解し尊重することが重要です。
ハイスキル派遣社員のキャリア支援ポイントとしては、以下が挙げられます。
- 定期的な面談で個人のキャリア目標を把握する
- 専門性を活かせるプロジェクトへ積極的アサインする(派遣会社へ要相談)
- スキルアップ機会の提供と成長支援を行う
特に、派遣社員が専門分野での経験を積みたい場合には、その専門性が発揮できる業務を提供するのが効果的です。一方、新たなスキル習得を望む場合には、社内研修への参加機会を検討する方法もあります。
ただし、業務内容の変更を検討する際は、必ず派遣会社への相談が必要です。契約範囲外の業務を依頼することは法的に問題となる可能性があるため、キャリア支援と法令遵守のバランスを取りながら対応することが大切です。
ハイスキルの派遣社員を含む人材派遣を活用するときの注意点
ハイスキル人材を派遣で活用する際には、受け入れ期間の制限や自社社員との関係性、情報セキュリティについて注意が必要です。
導入時の懸念点とその解決策を事前に理解しておきましょう。
受け入れ期間の制限と対応策
労働者派遣法では有期雇用派遣に関して「3年ルール」が設けられており、派遣先企業が派遣社員を受け入れられる期間を制限しています。この制限はハイスキル人材を長期的に活用するうえでの大きな課題となります。
3年ルールには「事業所単位の期間制限」と「個人単位の期間制限」があります。
事業所単位の期間制限とは、同一事業所における派遣の受け入れ期間の上限が3年となるルールです。ただし、過半数労働組合等からの意見聴取で延長が可能です。

一方、個人単位の制限は、同一の組織単位で同一の派遣社員を、3年を超えて受け入れることができないとするルールです。こちらは延長ができないものの、まったく別の課などへ異動することで引き続き受け入れられます。

詳しくは、以下の記事もご覧ください。
ハイスキルの派遣社員の場合、派遣先企業にとっては、同じ事業所、部署で3年以上働いてもらいたい希望も出てくるでしょう。そういった場合には、無期雇用派遣を活用する、直接雇用へ切り替えるなどの対応策が考えられます。
無期雇用派遣の派遣社員は個人単位の期間制限が適用されないため、3年を超えて同じ部署で働き続けることが可能です。無期雇用派遣については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、期間満了前に正社員やパート社員として直接雇用に切り替えると、優秀なハイスキル派遣社員を継続して活用できます。以下の記事もあわせて参考にしてください。
計画的な人材活用戦略を立て、これらの対応策を適切に組み合わせることが、ハイスキル人材の継続的な活用に不可欠です。
自社社員との関係性構築
ハイスキルの派遣社員と自社社員との関係構築は、プロジェクトの成功を大きく左右します。良好な関係を築くためには、初回ミーティングで派遣社員の専門性や役割を明確に紹介することが重要です。
また、定期的な1on1面談を設けると、課題や不安を共有できる場を作れます。
社内で派遣社員を紹介するときは、単なる外部人材ではなく「特定スキルをもつプロジェクトパートナー」として伝えると、心理的障壁を下げやすくなります。
以下のような情報共有の仕組み化も効果的です。
- Slackなどのチャットツールで専用チャンネルを作成
- 週次の全体MTGで進捗や課題を共有する時間を確保
- プロジェクト管理ツールで全員が状況を把握できる環境を構築
このような取り組みは、社内外の壁を超えた信頼関係が構築され、チーム全体の生産性向上につながります。
情報セキュリティ対策
ハイスキル人材の派遣では、機密性の高い情報へのアクセスが必要となるケースが多く、特に在宅派遣では情報漏洩リスクを防ぐための対策が不可欠です。以下のような対策を講じましょう。
対策 | 詳細 |
組織的対策 | ・派遣先企業と派遣会社の間、派遣会社と派遣社員の間で「守秘義務」「機密情報保持」契約を締結 ・業務に必要な最小限のアクセス権限設定 ・情報資産の取り扱いルールを明確化し、派遣社員にも周知徹底 |
技術的対策 | ・社内システムへのアクセスログを記録、監視する仕組みの導入 ・社外持ち出しが可能な情報とデバイスの制限 ・在宅勤務時は、VPNなど安全な通信環境を整備 |
教育的対策 | ・派遣開始時における派遣社員も含めたセキュリティ研修の実施 ・定期的なセキュリティ意識向上のための啓発活動 |
これらの対策は一度導入して終わりではなく、定期的な見直しと改善を行うことが重要です。特に社内ネットワークへの接続ルールの徹底や、不審なメールへの対応など、日常的な注意喚起も欠かせません。
ハイスキル人材を扱う派遣会社の選び方
ハイスキル人材を効果的に活用するためには、適切な派遣会社選びが重要です。専門性とマッチング精度、契約形態、人材育成・フォロー体制の充実度などの観点で検討しましょう。
具体的な選び方を把握し、自社に合った派遣会社の選定基準の検討に役立ててください。
専門性とマッチング精度
ハイスキル人材を効果的に活用するには、専門分野への深い理解と高精度なマッチングシステムをもつ派遣会社を選ぶのがおすすめです。
優れた派遣会社は、業界固有の知識や最新技術トレンドを把握しつつ、職種別の具体的なスキル要件を理解しています。IT・人事・経理などの専門分野に特化したコンサルタントを配置していることもあるでしょう。
また、良質な派遣会社は単なるスキルシートの比較だけでなく、以下のような多角的な視点でマッチングを行います。
マッチング観点 | 確認ポイント |
技術的適合性 | 言語・ツール・フレームワークの習熟度 |
業務経験 | 類似プロジェクト経験・業界知識 |
人物面 | コミュニケーションスタイル・チーム適性 |
就業条件 | 勤務時間・場所・報酬の希望との一致 |
近年では、AIツールを活用した高精度なマッチングを行う派遣会社も出てきています。マッチング精度を向上させるために、派遣先企業は「必須スキル」と「推奨スキル」を明確に区別し、優先順位をつけて要件を伝えることが重要です。
契約形態の多様性
ハイスキル人材を派遣で活用する際には、さまざまな契約形態から自社に最適なものを選択することが重要です。優れた派遣会社は、企業のニーズに合わせた多様な契約形態を提供しています。
主な契約形態と特徴は、以下のとおりです。
契約形態 | 特徴 |
フルタイム派遣 | 集中的なプロジェクト推進や本格的な業務移管に最適 |
時短派遣、パートタイム派遣 | 必要な時間だけ専門スキルを活用でき、コスト効率を高められる |
プロジェクト単位契約 | 成果物に対して契約するため、目標達成がわかりやすい |
在宅派遣 | 地理的制約なく優秀な人材を確保できる |
また、契約期間の柔軟性も重要な選択基準です。短期(1〜3ヶ月)、中期(3〜6ヶ月)、長期(6ヶ月以上)など、プロジェクトの性質や業務の繁閑に合わせて選択できる派遣会社を選ぶと、より柔軟な人材活用が可能になります。
ハイスキル人材の育成・フォロー体制の充実度
ハイスキル人材を派遣で活用する際は、派遣会社の人材育成・フォロー体制の充実度を確認することも必要です。例えば、以下のような体制が整っている派遣会社もあります。
育成システム | フォロー体制 |
・専門スキルを定期的にブラッシュアップする研修プログラム ・業界の最新動向や技術革新に関するセミナーの定期開催 ・キャリアパス構築のための個別カウンセリング | ・定期面談の実施 ・派遣先企業への訪問 ・専門相談窓口の設置 |
ハイスキル人材は市場価値の維持・向上に高い意識をもっているため、派遣会社が提供する成長機会の質が重要です。
また、専門性の高い業務を担当することが多く、派遣先企業との業務調整や専門的なバックアップ体制が整っているかどうかも選定の重要なポイントとなります。
以下の記事では、人材派遣会社の大手9社を比較しています。あわせてご覧ください。
ハイスキルの派遣社員の受け入れに関してよくある質問
この章では、ハイスキル人材を受け入れるときに生じやすい疑問について解説します。導入検討時の疑問点を解消するのに役立ててください。
ハイスキル人材とはどんな人材ですか?
ハイスキル人材とは、特定の分野における専門的な知識や高度なスキルをもつ人材のことです。例えば、経理・財務のプロフェッショナル、ITエンジニア、マーケティングスペシャリスト、人事労務の専門家などが該当します。
これらの人材は、必ずしもフルタイムで働くことにこだわっておらず、ライフステージに合わせて「時短」の働き方を選択していることがあります。
時短派遣や在宅派遣などで活用すると、派遣先企業には必要なスキルをもつ人材を必要な時間のみ確保できるメリットがあるでしょう。
派遣導入前にハイスキル人材の選考はできますか?
派遣先企業によるハイスキル人材の選考はできません。労働者派遣法によって、派遣先企業による派遣社員の面接や選考は禁止されています。
ただし、直接雇用を前提とする紹介予定派遣の場合は選考可能です。詳しくは以下の記事も参考にしてください。
まとめ
ハイスキルの派遣社員の受け入れは、高度な専門スキルを短時間で効率的に発揮できる方法です。派遣先企業にとっては、専門スキルの一時的な補完の他、採用コスト・教育コストの削減、即戦力の柔軟な活用による生産性向上につながります。
コスト効率を高める方法としておすすめなのが、時短派遣やパートタイム派遣、在宅派遣の活用です。活用の際には、派遣社員のポテンシャルを活かせる業務設計を行いましょう。
注意点として、ハイスキル人材に限らず、人材派遣には受け入れ期間が最長3年までという制限があります。ハイスキル人材を長期に活用したい場合には、無期雇用派遣の活用や直接雇用への切り替えの検討も必要です。
まずは、ハイスキル人材に強みをもつ派遣会社に自社のニーズを共有し、相談しながら進めるのが賢明といえます。
