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人材確保のために企業がすべきことは?方法や取り組み事例

人材確保とは、企業が事業運営に必要な人材を採用し、定着させるための一連の取り組みです。

少子高齢化による労働力人口の急速な減少や働き方に対する価値観の多様化などにより、日本企業の人材確保は年々困難になっています。企業は自社の状況に応じた人材確保戦略を構築することが重要です

本記事では、人材確保が難しい理由や現状の課題、人材を確保する主な方法・アイデア、中小企業の取り組み成功事例を解説します。

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人材確保が難しい理由と現状の課題

現代の企業にとって、人材確保は重要な経営課題です。

特に日本では、労働力人口の構造的な減少や働き方に対する価値観の多様化、採用チャネルの複雑化と競争激化などの理由により、企業間での人材争奪戦が激しくなっています

労働力人口の構造的な減少

日本の労働力人口は、少子高齢化の影響により、今後も大幅な減少が見込まれています。

総務省の推計によると、2021年に7,450万人だった生産年齢人口(15~64歳)は、2050年には5,275万人まで減少すると予測されています。これは約30年間で2,000万人以上、率にして約29%もの減少となります。

生産年齢人口は2050年には5,275万人

引用:総務省『生産年齢人口の減少

この急速な人口減少は、企業の人材確保に以下のような深刻な影響を与えます。

  • 採用候補者の絶対数が減少する
  • 優秀な人材の獲得競争が激化する
  • 採用コストが上昇する
  • 地方都市での人材不足が顕著になる

このような構造的な労働力人口の減少により、企業は従来の採用手法だけでは必要な人材を確保することが困難になっており、新たな人材確保戦略の構築が急務となっています。

働き方に対する価値観の多様化

現代の労働者の価値観は大きく変化しており、従来の「正社員・フルタイム・定年まで同一企業」という画一的な働き方に疑問をもつ人が増加しています。

特に若年層を中心に、以下のような価値観の変化が見られます。

  • ワークライフバランスの重視
  • キャリアの自律的な形成への関心
  • 転勤や長時間労働への抵抗感
  • 管理職への昇進意欲の低下

また、働く目的も世代により異なり、以下のように多様化が進んでいます。

世代働く主な目的
若年層自己実現、プライベートの充実
中年層安定性、家族との時間
高齢層やりがい、社会貢献

さらに、女性の社会進出が進むなか、育児や介護との両立を求める声も高まっています。

地方移住への関心も強まり、場所にとらわれない働き方へのニーズが拡大しているのが現状です。

このような価値観の多様化により、企業は従業員一人ひとりのニーズに応じた柔軟な働き方の選択肢を提供することが求められています。

画一的な人事制度では、優秀な人材の確保・定着が困難になっており、企業側も対応を迫られています。

採用チャネルの複雑化と競争激化

近年、デジタル技術の発展により採用チャネルは急速に多様化しており、企業はさまざまな選択肢から最適な組み合わせを検討しなければなりません

主な採用チャネルは、以下のとおりです。

  • 求人媒体(求人サイト、求人広告)
  • 人材紹介会社
  • 企業ホームページ・オウンドメディア
  • ダイレクトソーシング
  • リファラル採用
  • SNS(ソーシャルリクルーティング)
  • ハローワーク

この背景には、デジタルネイティブ世代の台頭によるオンラインシフトや、働き方の多様化にともなう求職者ニーズの細分化があります。

企業間の人材獲得競争も激化しており、単一のチャネルに依存するのではなく、複数のチャネルを効果的に組み合わせる「マルチチャネル戦略」が求められています。

各チャネルの特性を理解し、自社の採用ニーズに合わせて最適な組み合わせを見出すことが、採用成功への鍵となるでしょう。

人材確保の主な手法

人材確保の主な方法

人材確保には、主に以下の方法があります。

  • 正社員採用
  • パート・アルバイト採用
  • 業務委託
  • 人材派遣

比較検討のために、各手法の特徴を理解しましょう。

正社員採用

正社員採用は、企業の中核人材を確保する最も重要な手段です。

新卒採用は将来の幹部候補を確保でき、組織の活性化や企業文化の継承にもつながります。

一方、中途採用は即戦力の確保が可能で、専門的スキルをもつ人材の獲得により、環境変化への迅速な対応が期待できます。

正社員採用のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・長期的な人材育成が可能
・企業への帰属意識が高い
・安定した労働力を確保できる
・社内ノウハウが蓄積できる
・採用コストが高い
・雇用の柔軟性が低い
・人件費が固定費化する
・ミスマッチ時のリスクが大きい

これらの特徴から、正社員採用は特に以下のような企業におすすめです。

  • 長期的な事業成長を目指している
  • 専門性の高い業務を行う
  • 顧客との信頼関係が重要
  • 企業文化や理念の浸透を重視している
  • 機密情報を扱っている

正社員採用を成功させるためには、自社に必要な人材像を明確にし、経営戦略と人材戦略を一体的に考えることが重要です。

パート・アルバイト採用

パート・アルバイト採用は、多くの企業において柔軟な労働力を確保する重要な手段です。

主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・必要な時間帯や曜日に限定して人材を確保できる
・人件費を抑えながら業務の繁忙期に対応可能
・正社員採用に比べて採用プロセスが簡略化できる
・多様な人材(学生、主婦層など)の活用が可能
・定着率が低く、頻繁な採用活動が必要
・教育コストが継続的に発生する
・シフト管理が複雑になりやすい
・スキルの蓄積や継承が困難

パート・アルバイト採用は、以下のような企業におすすめといえます。

  • 業務の繁閑差が大きい
  • 特定の時間帯・曜日に人手が必要
  • 短期的なプロジェクトや季節的な需要に対応したい
  • 多様な働き方を提供して企業イメージを向上させたい

効果的な採用を行うためには、ターゲット層のニーズを理解することが重要です。

学生層は「時給の高さ」「生活時間に合わせた勤務」を重視し、主婦層は「自宅からの近さ」「家事・育児との両立」を求める傾向があります。こうした特性を踏まえた採用戦略の構築が、人材確保の成功につながります。

業務委託

業務委託は、企業が外部の専門家やフリーランスに特定の業務を依頼する採用形態です。

正社員採用とは異なり、プロジェクト単位や期間限定で人材を確保でき、必要な時期に必要なスキルをもつ人材を活用できます。

主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・福利厚生や社会保険料が不要でコストが削減できる
・専門性をうまく活用できる
・柔軟な対応が可能
・労働時間や勤務形態の管理が困難
・ノウハウが社内に蓄積されない
・企業側から指揮命令はできない

業務委託は、以下の企業におすすめです。

  • 専門性の高い業務が一時的に必要
  • プロジェクトベースで事業を展開している
  • 繁忙期と閑散期の差が大きい
  • 社内にない専門知識やスキルが必要
  • 固定費を抑えながら事業拡大を図りたい
  • スタートアップや新規事業の立ち上げ段階にある

業務委託を成功させるためには、契約時に業務範囲や成果物、納期などを明確に定めることが重要です。

適切な報酬設定により優秀な人材を確保し、定期的なコミュニケーションを通じてプロジェクトの進捗管理を行うと、期待する成果を得やすくなります。

以下の記事もあわせて参考にしてください。

人材派遣

人材派遣は、派遣会社に雇用された派遣社員が、派遣先企業で就業する雇用形態です。

主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・求める経験やスキルをもつ人材を迅速に確保できる
・必要な期間だけ柔軟に人員調整できる
・採用活動や労務管理の手間、コストを削減できる
・社会保険手続きや給与計算は派遣会社が対応
・派遣期間に制限がある(3年ルール
・直接雇用に比べて人件費が割高になる場合がある
・企業文化の浸透や帰属意識の醸成が難しい
労働者派遣契約により業務内容に制限がある
・派遣先企業は派遣社員の面接や選考ができない(派遣特定行為の禁止
派遣禁止業務がある

働き方の価値観が多様化するなか 、フルタイム勤務は難しいものの、高い専門スキルをもつ優秀な人材は市場に多く存在します。人材派遣は、こうした人材を柔軟に活用するための極めて有効な手段です。

人材派遣は、特に以下のような企業におすすめです。

  • 急な欠員や産休・育休の代替要員が必要
  • 繁忙期と閑散期の差が大きく、柔軟な人員調整をしたい
  • 新規プロジェクトや期間限定の業務で専門スキルをもつ人材が必要
  • IT・エンジニア・経理など専門性の高い人材を短期間で確保したい
  • 採用コストを抑えながら即戦力を確保したい

新規事業の立ち上げなど、即戦力となる専門人材が急に必要になった場合、正社員採用では時間がかかります。人材派遣であれば、自社で採用活動を行うより速やかに求めるスキルをもつ人材を確保できるでしょう。

急な欠員補充や繁忙期対応など、一時的に人材が必要な場面でも、有効な手段となります。

詳しくは、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。

ビースタイルスマートキャリアでは、『時短×ハイキャリア』というコンセプトのもと、高い専門性をもちながら柔軟な働き方を希望するプロフェッショナル人材の活用支援に強みをもっています。企業の成長に必要な多様な人材の確保については、ぜひビースタイルスマートキャリアにご相談ください。

企業が取り組める人材確保の方法アイデア集

人材確保を実現するためには、採用から定着まで総合的なアプローチが必要です。

厚生労働省の『人材確保に「効く」事例集』では、採用管理、定着管理、就労条件、理念・価値観という観点で具体的な取り組みアイデアが提示されています。

これらのアイデアは相互に関連しており、自社の課題や特性に応じて優先順位をつけながら、段階的に実施していくことが重要です。

採用管理

採用管理の取り組みは、「募集」「選考」の2段階に分けて改善すると効果的です。

採用管理改善例詳細
募集求人情報の訴求力を高める給与や労働条件を明確に示し、実際の職場環境や働く様子をイメージできる情報を掲載
効果的な求人媒体を検討する求人広告、Webサイト、ハローワークなど、採用したい人材層がよく利用する媒体を選択
採用形態や求人条件自体を見直す未経験者や無資格者も応募可能にするなど、求職者のニーズに合わせて条件を柔軟に設定
企業の魅力を求人以外でもアピールするSNSや企業ホームページで、社風や企業理念、福利厚生などを積極的に発信
選考採用面接時に業務内容や労働条件について丁寧に説明する入社後のミスマッチを防ぐために、業務内容や労働条件について詳しく説明し、可能であれば職場見学も実施
企業の人員構成とメイン採用ターゲットを見直すより多くの応募者を獲得できるよう、女性の積極採用や年齢層の拡大など、企業の人員構成を踏まえ、メインターゲットを再検討

採用管理の取り組みは、単独で実施するのではなく、自社の採用課題や業界特性、ターゲット人材の特徴を踏まえて複数の施策を組み合わせると、より高い効果を期待できます。

定着管理

採用管理に加えて、従業員が長期的に働き続けられる環境づくりも重要です。定着管理には「配置・配属」「評価・処遇」「教育訓練・能力開発」の3つの側面があります

定着管理改善例詳細
配置・配属きめ細かな配慮を入れた受け入れ体制を構築するメンター制度の導入や、入社後の段階的な教育プログラムの実施など
離職防止・モチベーション維持・人材育成を目的に配置転換する組織の活性化と人材の定着のために、従業員の適性や希望を定期的に把握し、キャリア形成につながる計画的な異動を実施
評価・処遇従業員が納得する人事評価を行う評価基準の明確化や360度評価の導入で、透明性の高い評価を実現
従業員が将来展望をもてるキャリアパスを設計する従業員のモチベーション向上のために、職位ごとの要件を明示し、昇進・昇格の道筋を可視化
従業員が社内での自分の役割・貢献・価値を確認できるような処遇を行う成果に応じた適切な報酬設定や、貢献度を見える化する仕組みづくり
長期勤続に対して手当支給・褒賞・メッセージカード手交を行う従業員の帰属意識を高めるために、勤続5年、10年といった節目での表彰制度を構築
教育訓練・能力開発定着を目指した新人教育を行うOJTとOff-JTを組み合わせた体系的な育成計画により、着実なスキルアップを支援
従業員が「育てられている」「成長している」と実感できる体制を構築する資格取得支援制度や外部研修への参加補助など、個人の成長意欲に応える制度設計を構築

これらの取り組みを総合的に実施すると、採用した人材の早期離職を防ぎ、長期的な人材確保につながります。

就労条件

就労条件の改善は、人材確保において重要な要素です。「労働条件」「労働環境」「人間関係」「福利厚生」の観点から改善策を検討すると効果的です。

就労条件改善例詳細
労働条件労働条件を整理する求職者に安心感を与えられるよう、法令に準拠した明確な労働条件を整備
納得性のある賃金に設定する優秀な人材の確保と定着につなげるために、従業員の貢献度に応じた公正な賃金体系を構築
労働時間が過重にならないよう短縮する業務効率化やシフト制の見直しにより残業時間を削減し、ワークライフバランスの実現を支援
休暇が取得しやすい職場環境を整える有給休暇の計画的取得推進や業務の属人化解消により、誰もが安心して休暇を取れる体制を構築
退職金制度を整備する中小企業退職金共済制度の活用や企業型確定拠出年金の導入で、従業員の将来不安を軽減、長期勤続を促進
労働環境労働負荷を軽減する措置をとるIT化による業務効率化や作業手順の見直し、適切な人員配置により、身体的・精神的負担を軽減
多様な働き方を可能とする制度を導入するテレワークやフレックスタイム制、時短正社員制度など、従業員のライフスタイルに合わせた柔軟な勤務形態を提供
働き続けやすい制度を導入する育児・介護休業制度の充実や、復職支援プログラムの整備により、ライフイベントがあっても継続して働ける環境を整える
女性の働きやすい職場環境を整える女性専用の更衣室や休憩室の設置、産前産後休暇・育児支援制度の充実により、女性が活躍しやすい職場づくりを推進
人間関係職場コミュニケーションをスムーズにとれる環境を作る定期的な1on1ミーティングや部門横断的な交流会の実施により、風通しの良い職場風土を醸成
管理者に対して部下との関係に関する指導を行うマネジメント研修やコーチング研修を通じて、管理職の部下育成スキルやコミュニケーション能力を向上
職場の人間関係を把握したうえで必要な指導を行う定期的な従業員満足度調査やストレスチェックを実施し、問題の早期発見と適切な対応により良好な職場環境を維持
福利厚生従業員の「採用」「定着」が進むような形で実施されているかどうかを検討する企業への帰属意識や愛社精神につながるよう、社員食堂の充実や資格取得支援、社内イベントなど、従業員のニーズに合わせて検討

これらの施策を組み合わせると、求職者にとって魅力的な職場となり、既存従業員の定着率も向上させられます。

理念・価値観

理念・価値観は、採用管理・定着管理・就労条件の根底にある経営理念や組織文化のことです。「経営理念」「組織文化」の観点で取り組みが求められます

理念・価値観改善例詳細
経営理念従業員の意識(価値観など)を把握する定期的なアンケート調査や面談で把握し、経営理念との整合性を確認
従業員が理解し、共感できるよう企業の経営理念を明確化する従業員に企業への誇りや帰属意識、将来性を感じさせ、長期的な定着につなげる
従業員が企業への誇り・帰属意識・連帯感・将来性を感じられるようにする日常業務に落とし込んで従業員の行動指針として浸透させ、企業の一員としての誇りと将来への期待感を醸成
組織文化従業員が働きがいや働きやすさを感じられる組織文化を構築する従業員の意見を積極的に取り入れる風土づくり、成果を適切に評価・承認する仕組みを整備
従業員同士が尊重し、信頼できる組織文化を作る多様性を認め合い、お互いの強みを活かし合える職場環境を整備し、心理的安全性の高いチームワークを実現
組織をまとめるリーダーのポストを新設する部門横断的なプロジェクトリーダー、従業員エンゲージメント担当など

このような理念・価値観の整備により、求職者に「この企業で働きたい」と思ってもらえる組織風土が醸成され、優秀な人材の確保と定着が実現できます。

中小企業における人材確保の取り組み成功事例

中小企業が直面する人材確保の課題は深刻ですが、全国各地で独自の工夫により成功を収めている事例があります。

厚生労働省がまとめた「地域で活躍する中小企業の採用と定着成功事例集」では、業種別に特徴的な取り組みが紹介されています。

事例から、自社の状況に応じた実践的な施策のヒントを得ましょう。

建設業A社

建設業A社は、求人を出しても人材が集まらず、特に若手技術者の不足に悩んでいました。同社の売上の多くを占める公共工事の入札では、「週休2日での工事の実施実績」「女性技術者の配置」が評価項目となったため、事業受注の観点からも休日確保や女性登用が急務となりました。

そこで同社は、以下のようにトップダウンで業務のデジタル化を推進しています。

対象デジタル化による効果
バックオフィスクラウド系アプリを導入し、経費支払い事務を削減
現場受発注者間で工事情報を共有できるアプリを活用し、情報共有を効率化

また、採用方針も大きく転換しました。

専門知識を問わず未経験者を採用して入社後に育成する体制を構築するとともに、従業員向けのYouTubeチャンネルを開設し、本社と現場が一体となって教育に注力しました。

女性従業員の採用にも積極的に取り組み、子育て中の従業員を対象とした時短勤務制度を導入しています。業務効率化により、柔軟な働き方が可能となりました。

取り組み後には、取得できる休日が増え、3年間で10~30代の9名を採用できています。うち2名が女性、6名は土木科以外を卒業した人材であり、さまざまな学歴や経歴をもつ多様な人材を確保できました。

製造業B社

製造業B社は、従業員の高齢化が進み、中長期的な事業継続が危ぶまれていました。10年後を見越して幹部候補となる人材の採用を決意しましたが、求人を出しても反応はなかったそうです。

そこで同社は、大学生の就業体験事業の一環で学生を受け入れることにしました。学生は得意分野を活かしながら、以下のような業務を体験しました。

  • 社内報の作成
  • 工場の掲示物作成
  • めっきの成分分析
  • 製造業務の体験

これらの活動を通じて、学生は同社の事業に対する理解を深められました。

一方で、現場では学生の活躍が社内のコミュニケーション活性化に寄与し、従業員のモチベーション向上や離職防止につながりました。

また、同社ではメールマガジンで社内情報を定期的に発信しており、部署を超えた相互理解を促進しています。各種検定試験に合格した従業員を取り上げることで、資格取得への意欲向上にも貢献しました。

その結果、就業体験を行った学生全員が、職場環境と自身の得意分野を活かせることに魅力を感じ、正社員として入社を希望しました。若い従業員の存在により、工場見学に訪れる学生の反応も良好となり、その後の採用活動も成功しています。

同社は合同説明会や高校・大学の就職支援も積極的に活用し、5年間で集中的に人材を採用しました。現在では、その中の5人が課長職に就いており、次世代の経営幹部として活躍しています。

情報通信業C社

情報通信業C社は、請負事業形態による長時間労働が原因で従業員が疲弊し、退職による人材不足に陥っていました。そこで、顧客と直接契約する事業運営を目指し、新規事業を立ち上げました。

具体的には、Webサイト制作を開始し、その6年後からは経営の長期安定化のために、別企業と直接パートナー契約を締結し、安定的なサービス提供を可能にするニアショア開発に参入しています。

収益性が高い事業活動への転換と時間外労働を削減する働き方改革を同時に実現するとともに、採用方法を工夫して多様な人材の確保に取り組みました。

採用面では、未経験者である地元の大学・専門学校の新卒をメインに採用活動を行っています。インターンシップも積極的に開催し、入社後のミスマッチを防ぐため、最終選考で数日間の職場体験を実施しました。

また、アスリート採用とUIJターン採用(地方出身者が都市圏で就職・進学後、再び地方に戻って就職するUターン、都市圏出身者が地方で就職するIターン、地方出身者が都市圏で就職後に故郷に近い地方都市で就職するJターンをまとめて指す採用手法)を導入し、職場に多様性を生み、新しい事業の開発や顧客開拓、働き方の見直しにつなげています。

結果、自分たちが受注量や仕事を選ぶ立場になることで働き方の調整が可能になり、利益率も上がりました。課題だった残業時間の削減にも成功し、平均時間外労働時間は1人あたり月9.5時間にまで削減しました。

働きやすい環境が、離職率の低下と毎年の新規採用につながっているそうです。

医療介護業D社

医療介護業D社は人手不足に悩んでいましたが、離職原因を徹底的に分析したところ、「腰痛」「長時間労働(残業)」「メンタル不調」の3つが主要な離職要因であると突き止めました

そこで、これらの課題に対して以下の取り組みを実施しました。

主な離職要因実施した取り組み
腰痛持ち上げない介護「ノーリフティング」を目指し、リフトなどの福祉機器を積極的に導入。経営陣は導入後も現場の実情を常に把握し、制度や技術の最新動向を追い続けた
長時間労働(残業)データ分析により残業につながる業務を特定し、作業をマニュアル化。残業者の固定化を解消し、全体の作業効率を向上
メンタル不調社内で面談制度「トーキング」を導入。月1回、全従業員と10分間の一対一面談を実施し、人間関係の悪化防止と問題の早期発見に努めた

これらの取り組みの結果、離職率は3~5%まで低下しました。60歳以上の従業員も全体の2割以上を占めるようになり、幅広い年代が活躍する職場となりました。

さらに、取り組みの積極的な発信により働きやすい介護現場としての認知度が高まり、新たな人材獲得にも成功しています。

人材確保に関してよくある質問

人材確保に関してよくある質問として、多くの経営者から寄せられる3つの質問に回答します。疑問や不安の解消にお役立てください。

なぜ人材確保は難しいのですか?

人材確保が難しいとされるのは、労働力人口が減少しているうえ、働き方に対する価値観の多様化が見られているためです。また、採用チャネルの複雑化と競争激化も関与しているといわれています。

人材確保の方法には何がありますか?

人材確保の方法には、正社員やパート・アルバイトの採用、業務委託、人材派遣の活用があります。

また、企業内で取り組めるアイデアとしては、採用管理の改善、定着管理の強化、就労条件の整備、理念・価値観の浸透が挙げられます。

人材確保に活用できる補助金はありますか?

厚生労働省の「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」「介護人材確保・職場環境改善等事業の補助金」があります。

補助金・助成金制度人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)介護人材確保・職場環境改善等事業の補助金
概要離職率の低下に対し、雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)または業務負担軽減機器など(従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等)の導入による雇用管理改善に対する取り組みを支援介護職員などの人件費(一時金等)改善や職場環境改善(介護助手を募集するための経費、研修費等)の取り組みを支援
補助金・助成金額・雇用管理制度:25万~50万円
・雇用環境整備:対象経費の50~62.5%
1ヶ月あたりの介護総報酬 × サービス累計別交付率

これらの補助金・助成金を活用すると、人材確保に関する財務的な負担を軽減できます。

申請要件や手続きの詳細については、各制度の公式Webサイトで最新情報を確認し、自社の状況に合った制度を選択しましょう。

まとめ

人材を確保するには、正社員採用、パート・アルバイト採用、業務委託、人材派遣といった方法があります。

また、長期的な人材確保を実現するためには、採用から定着まで総合的なアプローチが必要です。

人材確保は一朝一夕に解決できる課題ではありませんが、自社に最適な施策を見つけ、継続的に取り組んでいくことが成功への第一歩となるでしょう。

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