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ビジー型派遣とは?通常派遣との違い、メリット・デメリット

ビジー型派遣とは、企業の繁忙期に合わせて派遣社員を活用する人材配置戦略です。月末・月初などの忙しい時期に集中して人材を配置し、閑散期には最小限の人員体制にすることで、人件費の最適化を図れます。

本記事では、ビジー型派遣の基本概念や通常派遣との違い、メリット・デメリット、導入に適した職種、成功のポイントまで詳しく解説します。

ビジー型派遣とは

派遣の活用方法ごとの違い

ビジー型派遣とは、企業の繁忙期のみ人材を確保する派遣形態です。月末・月初などの業務量が増加する時期に限定して有期雇用の派遣社員を活用します。

業務工数が増加するタイミングで追加人員を配置し、繁忙期以外は必要最低限の人員体制を維持するように必要な期間のみ利用することで、コスト削減効果が期待できるでしょう。

業務量の変動に合わせて柔軟に人材を確保できるため、人件費の最適化を図りたい企業にとって有効な選択肢です。

通常の派遣との違い

ビジー型派遣と通常の派遣との大きな違いは、派遣期間の考え方です。

通常の派遣では、一定期間継続して人材を確保するのに対し、ビジー型派遣は業務量がピークとなる特定の期間だけに集中して人材を配置します。

例えば、年末年始など商戦期の際の販売応援や、確定申告時期の税理士事務所での事務サポートなど、「特定の期間だけ人手が必要」という状況に最適です。

契約形態自体は通常の派遣と同じく、派遣会社と派遣先企業で労働者派遣契約を締結します。

時短派遣との違い

ビジー型派遣と時短派遣は、どちらも柔軟な人材活用を可能にする派遣形態ですが、最適な活用シーンに違いがあります

時短派遣は、一般的には週2~3日、1日4~6時間といった短時間の勤務を前提とした派遣契約です。通常業務のサポートや専門スキルをもつ人材の短時間活用などにおすすめの選択肢です。

一方、企業の繁忙期に合わせたフルタイム、長時間勤務が中心のビジー型派遣は、プロジェクトのピーク時、季節的な繁忙期、欠員補充などに適しています。

シェア型派遣との違い

シェア型派遣とビジー型派遣は、人材の活用方法に違いがあります

シェア型派遣は、1人分のフルタイム業務を複数のパートタイム派遣社員で分担する「ワークシェアリング」の考え方に基づいています。自社社員1人にかかる負担を減らしながら、効率的に業務を進められます。

一方、ビジー型派遣は、業務量の多い繁忙期や特定の時間帯だけ派遣社員を活用する方法です。コスト削減効果を図るアプローチ方法が異なります。

ビジー型派遣のメリット

繁忙期のみ人材派遣を活用するビジー型派遣には、コスト削減効果や業務量変動に対する柔軟な対応力、採用・教育コストの軽減などのメリットがあります

ビジー型派遣の導入で得られる具体的な効果を把握し、自社における活用の可能性を検討しましょう。

コスト削減効果

ビジー型派遣の最大のメリットは、業務量に合わせた人材配置によるコスト削減効果です。通常の派遣では業務量の変動に関わらず一定のコストがかかりますが、ビジー型派遣では繁忙期のみに人材を配置できます。

例えば、スマートキャリアの場合、フルタイム稼働と月末月初の10日 × 6時間稼働を比較したときに、月額コストが62.5%ダウンした実績があります(※2023年10月1日時点。当社取扱い求人について、求人内容変更時の効果)。

ビジー型派遣は業務の繁閑に合わせた柔軟な人材活用を実現し、無駄なコストを削減することが可能です。

業務量変動に対する柔軟な対応力

ビジー型派遣の強みは、業務量の変動に合わせて人材を柔軟に配置できる点です。

例えば、以下のような職種では、季節による業務量の変動が見られます。

  • 小売業における年末年始やセール時期の接客・在庫管理
  • 税理士事務所における確定申告期間の書類処理業務
  • 観光業におけるハイシーズンの受付・案内業務
  • 物流業における繁忙期の荷物仕分け・配送管理

このような状況でビジー型派遣を活用すると、繁忙期にのみ必要な人材を配置し、閑散期には人員を減らすといった柔軟な対応が可能となります。これにより固定費としての人件費を変動費化し、経営資源の最適配分を実現できるでしょう。

また、突発的な業務増加や予期せぬプロジェクトの発生にも迅速に対応できるため、派遣先企業の機動力向上にも貢献します。状況に応じた人材配置は、正社員だけでは対応しきれない業務量の変動に対する強力なソリューションとなります。

採用・教育コストの軽減

通常の採用では、求人広告費、選考に関わる人件費、採用イベント参加費など、人材を確保するまでに多くの初期費用が発生します。

一方、ビジー型派遣は有期雇用派遣の活用方法の一つであり、派遣会社が採用業務を担当するため、さまざまなコストを削減できます

  • 採用プロセスにかかる広告費用が不要
  • 面接や書類選考にかかる人的コストを削減できる
  • 入社時の基本研修費用が軽減できる
  • 繁忙期のみの利用で無駄な人件費が発生しない

特に教育面では、すでにスキルをもった人材が派遣されるため、業務に特化した短時間の研修だけで即戦力として活躍できます。

また、業務量の変動に合わせて必要なときのみ人材を確保できるため、人材育成の長期的なコストを考慮する必要がありません。

季節変動の大きい業界や短期プロジェクトを多く抱える企業にとって、大きなメリットといえるでしょう。

ビジー型派遣のデメリット

ビジー型派遣には業務の継続性・一貫性の確保の難しさや人材の定着・育成における課題、管理体制構築の複雑さなどのデメリットがあります。導入前に考慮すべき課題やリスクを理解し、対策を講じておくことが重要です。

業務の継続性・一貫性の確保の難しさ

ビジー型派遣は繁忙期に合わせて人材を配置する形態のため、閑散期には同じ派遣社員が配置されないことが多く、業務の継続性や一貫性を保つことが難しくなる可能性があります。

これにより以下のような問題が発生しやすくなります。

  • 情報共有が不足する
  • 業務の重複や漏れにつながる
  • 対応の質にばらつきが生じる

特に、顧客対応が必要な業務や進行中の案件、創造的業務などで影響が出やすいでしょう。

対策として、スムーズに業務を継続するための仕組みが必要です。ビジー型派遣を活用する場合は、詳細なマニュアルの作成や効果的な引継ぎシステムの構築が不可欠となります。

人材の定着・育成における課題

ビジー型派遣は短期間の就業が基本となるため、人材面で特有の課題が生じやすくなります。主な課題は以下のとおりです。

定着に関する課題育成面での課題
・派遣先企業への帰属意識が育ちづらい
・業務の引継ぎや連続性の維持に工夫が必要
・スキル向上の機会が限られる
・専門性を高めるための十分な経験を積みにくい

とはいえ、ビジー型派遣を扱う派遣会社はハイスキル人材も豊富に抱えている傾向があり、即戦力として活用できるため、スキルの面でそこまで不安になる必要はありません。

独自の研修制度がある派遣会社も多いため、不安な場合は相談するとよいでしょう。

他にできる対策として、短時間でも効率的に学べるマニュアルの整備や派遣会社と連携した継続的な人材確保の仕組み作り、短期間でも成果を実感できる明確な業務設計などが挙げられます。

管理体制構築の複雑さ

ビジー型派遣では、業務の引継ぎ体制構築が複雑になりがちです。派遣社員の入れ替わりが頻繁に発生するため、シフト表の作成・調整作業が通常の派遣よりも煩雑になります。

効率的な管理体制を構築するために、以下の内容を行いましょう。

管理体制の構築方法詳細
デジタルツールの活用シフト管理や業務引継ぎを効率化するクラウドシステムの導入
派遣先責任者の選任派遣社員の労務管理や安全衛生管理を担当する責任者の配置(労働者派遣法にて派遣先企業に配置が義務付けられている)
マニュアル整備短期間でも業務を遂行できる詳細な業務手順書の作成

また、派遣会社との密な連携体制を築くことも重要です。問題発生時の迅速な対応ルートを確保しておくと、突発的な人員不足や業務の遅延などのリスクに備えられます。

ビジー型派遣の導入に最適な職種例

ビジー型派遣は、特定の期間に業務が集中する職種で効果を発揮します。季節変動の大きい業界やプロジェクト型業務での活用が最適です。

特徴的なのは、これらの業務が繁忙期と閑散期の差が明確で、業務の切り分けが容易な点です。自社業務への適用の可能性を判断できるよう、最適な職種例を詳しく把握しましょう。

月初・月中・月末で業務量に波がある経理業務は、ビジー型派遣との親和性が高い職種の一つです。

例えば、月初の請求書発行、月中の支払処理、月末〜月初にかけての締め業務など、定型的な繁忙期が発生するため、必要なタイミングで即戦力人材を確保することで、業務の平準化や社員の負荷軽減につながります。

季節変動の大きい業界

繁忙期と閑散期の差が激しい業種において、必要なときのみ人材を確保できるビジー型派遣の柔軟性は大きなメリットとなります。

ビジー型派遣が最適な職種例は、以下のとおりです。

職種例タイミング
小売業年末年始やセール期間中の人員増強
観光・ホテル業繁忙シーズン中の一時的なスタッフ増員
物流業界年末の配送量増加時期への対応
農業・食品加工収穫期や製造ピーク時の人材確保

ビジー型派遣の活用により、人件費の最適化とともに、繁忙期における顧客サービスの質を落とさない体制を維持できます。閑散期には余剰人員を抱える必要がなく、経営の効率化にも貢献するでしょう。

プロジェクト型業務

プロジェクト型業務は、明確な開始と終了があり、その間の業務量が大きく変動することが特徴です。このような業務では、段階に応じて必要な人員数や業務内容が変化するため、ビジー型派遣が効果を発揮します。

具体的なプロジェクト型業務の例は、以下のとおりです。

  • 新製品発売にともなうマーケティングキャンペーン
  • システム導入・更新時のデータ移行作業
  • 展示会やイベント準備の事務作業
  • 決算期の経理補助業務

プロジェクト段階別の活用方法は、以下のとおりです。

プロジェクト段階業務内容ビジー型派遣の活用法
準備期資料作成、データ収集短時間で完結する業務を担当
ピーク時集中的な作業処理複数名を投入して処理能力を一時的に増強
収束期成果物整理、報告書作成限定的な業務のサポート

ビジー型派遣は、プロジェクトの進行に合わせて柔軟に人材を配置できるため、コスト効率と業務効率の両立が可能になります。

ビジー型派遣を成功させるポイント

ビジー型派遣を効果的に活用するには、業務内容の明確化と細分化を行い、効果的な人員配置を立てましょう。派遣会社との連携強化も重要です。

自社に適した運用方法を設計できるよう、具体的な実践ポイントの理解が必要です。

業務内容の明確化と細分化の重要性

ビジー型派遣を成功させるためには、業務の明確化と細分化が不可欠です。

まず、現在の業務フローを詳細に分析し、繁忙期に特に負荷がかかる工程を特定しましょう。データ入力や書類作成など、短時間でも成果が明確な作業を洗い出すことが重要です。

次に、特定した業務を独立して完結できる単位に分割します。これにより、派遣社員が効率的に作業できるようになります。

細分化した業務には、それぞれ詳細なマニュアル作成が必要です。派遣社員がすぐに業務を理解できるよう、図解や具体例を多用した資料を準備しておくのがおすすめです。

業務を明確化・細分化することで、ビジー型派遣社員が即戦力として活躍できる環境が整い、業務効率の向上とコスト削減の両立が可能になります。

効果的な人員配置の戦略

ビジー型派遣を成功させるには、業務の繁閑を正確に把握した配置計画が重要です。

週や月単位での業務量の変動パターンを分析し、シフト表に反映させましょう。また、急な欠員や業務増加に備えて、あらかじめ余力をもたせた計画を立てます。

特に重視すべきは、派遣社員のスキルや経験を考慮した配置です。業務の難易度に応じて、経験豊富な派遣社員と新人社員を組み合わせると、短時間でも効率的な業務遂行が可能になります。

さらに、自社社員と派遣社員の業務分担を明確にし、それぞれの強みを活かした役割分担を行うことも大切です。

定期的に配置計画を見直し、実際の業務状況に合わせて柔軟に調整していくと、限られた時間内で最大限の成果を引き出せるようになります。

派遣会社との連携強化

ビジー型派遣を成功させるためには、派遣会社との緊密な連携体制の構築が必要です。

コミュニケーション体制の確立のために、定期的な情報共有ミーティングを実施し、業務の進捗状況や課題を共有しましょう。緊急時の連絡体制を明確にしておくと、突発的な業務変動にも対応できます。

また、派遣会社に対して業務内容を詳細に伝えることで、適切な人材のマッチングが実現します。特に、繁忙期の業務内容や必要なスキルセットを具体的に提示することが大切です。

連携強化の前提として、派遣先責任者は自分の役割を正しく把握しておかなければなりません。派遣先責任者は派遣会社との連絡調整の役割をもち、派遣先管理台帳について1ヶ月に1回以上派遣会社へ通知しなければなりません。

派遣先責任者については、以下の記事も参考にしてください。

ビジー型派遣と他の派遣・雇用形態の組み合わせ戦略

ビジー型派遣は単独で活用するだけでなく、他の派遣・雇用形態と組み合わせると、より効果的な人材戦略を構築できます。例えば、シェア型派遣や時短派遣、正社員・契約社員などが挙げられます。

コスト効率と業務品質の両立方法について押さえておきましょう。

シェア型派遣との相乗効果

ビジー型派遣とシェア型派遣それぞれの特性を活かして組み合わせると、人材リソースの最適化が可能になります。

シェア型派遣は1人分の正社員業務を複数の派遣社員で分担する形態であるのに対し、ビジー型派遣は繁忙期のみ人材を配置する形態です。

シェア型派遣で基本的な業務をカバーしつつ、繁忙期にはビジー型派遣で人員を追加配置できるためコストの最適化が図れるでしょう。

時短派遣との使い分け

ビジー型派遣と時短派遣は、業務特性に適した活用方法があります。両者を効果的に使い分けるポイントは以下のとおりです。

派遣形態最適な業務特性活用シーン
ビジー型派遣繁忙期の集中的な業務季節変動のある業務、キャンペーン期間
時短派遣短時間で継続的な対応が必要な業務日常的な定型業務、サポート業務

ビジー型派遣は業務量のピークに合わせて人材を確保できるため、繁忙期に集中的なリソースが必要な場合に最適です。

一方、時短派遣は「1日4〜7時間の週2〜4日勤務」「週5日10〜17時までの勤務」などの短日数・短時間勤務が基本となるため、継続的に一定の業務量がある場合に効果的です。

両者を組み合わせる際には、業務の性質を「集中と分散」の観点から分析し、年間の業務変動も考慮した計画的な人材配置が重要です。

特に育児や介護などで時短勤務を希望する優秀な人材の活用も視野に入れると、多様な人材ニーズに対応できます。

正社員・契約社員とのバランス最適化

ビジー型派遣と正社員・契約社員とのバランスを最適化すると、固定人件費の最適化に加え、各雇用形態の強みを活かした配置が可能になります。業務変動への柔軟な対応力も確保できるでしょう。

最適なバランスを構築するための業務配分の例は、以下のとおりです。

雇用形態適した業務内容期間の目安
正社員長期的な人材育成が必要な基幹業務長期継続
契約社員専門性の高い業務1〜3年
ビジー型派遣繁忙期の補助業務・短期プロジェクト数日〜数ヶ月(最長3年まで可能)

正社員にはスキルアップにつながる業務に集中してもらい、業務量の変動に合わせてビジー型派遣を調整することで、人材リソースの最適化が実現できます。業務の質を保ちながら、コスト効率の良い人材戦略を展開することが可能です。

ビジー型派遣に関してよくある質問

ビジー型派遣を検討する際によくある質問について、お答えします。導入前の不安や疑問の解消に役立ててください。

ビジー型派遣と時短派遣の違いは?

ビジー型派遣と時短派遣は、どちらもコスト削減効果が期待できる人材派遣の活用方法です。

違いはそのアプローチ方法で、ビジー型派遣は繁忙期に合わせて派遣社員を配置する形態ですが、時短派遣は業務量に関わらず勤務時間を短く設定して働いてもらう形態です。

同じ派遣社員を継続して利用できる?

ビジー型派遣であっても、通常の有期雇用派遣と同様に、派遣受け入れ可能期間は最長3年です。

ただし、派遣社員が派遣会社と無期雇用契約を結んでいる場合(無期雇用派遣)や、派遣社員が60歳以上の場合、期限が明確なプロジェクト業務に従事する場合、産休・育休代替など特定目的の業務の場合は例外となります。

また、事業所単位の期間制限の延長手続きをとった後であれば、部署を変更すれば同じ事業所内で最長3年まで受け入れることが可能です。

詳しくは、以下の記事も参考にしてください。

まとめ

ビジー型派遣は、繁忙期のみ有期雇用派遣を利用して、必要な期間だけ利用することでコスト削減効果が期待できる方法です。

スマートキャリアでは、フルタイム稼働と月末月初の10日 × 6時間稼働を比較した場合、月額コストの62.5%もダウンできた実績があります(※2023年10月1日時点。当社取扱い求人について、求人内容変更時の効果)。

季節変動の大きい業界やプロジェクト型業務が多い企業におすすめの選択肢といえるでしょう。

以下では、製造業向けSaaS × 経理ビジー型派遣を活用した事例を紹介しています。あわせてご覧ください。