- 人材派遣の基本
【ニュース解説】マージン率の仕組みと適正水準を徹底解説
2026年6月、人材派遣会社の大手5社に対して公正取引委員会が立ち入り検査を行ったというニュースが報じられました。「自社が契約している派遣会社の料金やマージン率は適正なのだろうか?」と不安を感じた採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、派遣料金の仕組みを理解する上で欠かせないマージン率の正しい見方や適正水準について、分かりやすく整理してお伝えします。
目次
今回の事件の概要|人材派遣大手5社への立ち入り検査
2026年6月、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、人材派遣大手5社に立ち入り検査を実施しました。
報道によると、各社は企業から受け取る派遣料金についてカルテルを結び、不当な価格調整(引き上げ)を行っていた疑いが持たれています。特に一般事務などの職種において派遣料金が引き上げられたものの、それが派遣社員の時給(賃上げ)には十分に反映されず、会社側の利益確保に回っていた可能性を公取委は調査しています。
公正取引委員会が同法違反の疑いで人材派遣業界・派遣会社に立ち入り検査に入るのは、今回が初めてのことです。現時点では疑いの段階であり各社の違反が確定したわけではありませんが、派遣料金や契約の見直しを検討している企業にとって見逃せないニュースとなっています。
派遣料金を巡る「カルテル」とは?
ニュースで耳にするカルテルとは、同業他社同士が連絡を取り合い、商品の価格や生産数量などを共同で取り決める行為のことです。本来、企業は顧客を獲得するために、自社の努力で価格を下げたりサービスを向上させたりと競争を行います。しかし、カルテルが結ばれるとこの競争がなくなるため、企業側は不当な利益を得やすくなる一方、顧客(今回であれば派遣先企業)は高い料金を支払わされる不利益を被ります。
日本の法律(独占禁止法)では、こうした市場の自由な競争を制限する行為を不当な取引制限として禁じています。
|公正取引委員会の役割
公正取引委員会(公取委)は、独占禁止法を運用し、市場の公正で自由な競争を守る国の行政機関です。「市場の番人」とも呼ばれ、カルテルや談合などの疑いがある場合、企業への立ち入り検査(強制調査)などを行う強い権限を持っています。今回も、市場競争を歪める行為が本当に行われていたのか、公取委による厳格な調査が進められています。
派遣料金とマージン率の関係とは?
今回の事件で焦点となっている派遣料金ですが、派遣先企業が支払う料金のすべてが直接派遣社員の給与になるわけではありません。ここで重要になるのが「マージン率」という指標です。
派遣会社のマージン率を見て、「この数字は高すぎるのではないか」「どこまでが適正なのか分からない」と感じている方は、数字の大小だけで判断するのではなく、マージン率の仕組みと中身をあわせて理解することが欠かせません。ここからは、マージン率の基本的な考え方、平均相場、主な内訳をわかりやすく解説します。
派遣のマージン率とは?仕組みと計算方法
派遣のマージン率は、派遣会社を比較するときによく見られる指標の一つです。ただし、数字だけを見て高い・安いと判断すると、実態を見誤りやすくなります。マージン率は、派遣会社の利益率そのものではなく、社会保険料や教育訓練費、有給休暇に関する費用なども含んだ割合だからです。
実務でも、マージン率の見方を誤ると「安い会社を選んだつもりが、サポートや人材の安定供給に不安があった」というズレが起こります。まずは、マージン率が何を示す数字なのか、どう計算されるのか、どこで確認できるのかを正確に押さえることが重要です。
|マージン率の定義:「派遣料金」と「派遣社員の賃金」の差額
派遣のマージン率とは、派遣会社が受け取る派遣料金のうち、派遣社員に支払われる賃金を除いた部分が全体の何%を占めるかを示す割合です。言い換えると、「派遣料金」と「派遣社員の賃金」の差額が、どの程度あるかを見る指標です。
ここで注意したいのは、この差額がそのまま派遣会社の利益ではないという点です。一般社団法人日本人材派遣協会や厚生労働省の案内でも、マージンには派遣会社の営業利益だけでなく、派遣社員に関わるさまざまな費用が含まれるとされています。具体的には、健康保険や厚生年金などの社会保険料、教育訓練費、有給休暇取得時の費用、募集費や管理費などの諸経費が入ります。
そのため、マージン率を見て「この会社は3割も抜いている」と受け止めるのは正確ではありません。派遣会社は、派遣社員を雇用する立場として法定費用や就業支援コストを負担しています。マージン率は、その運営コストも含めた全体像を見るための数字です。
なお、マージン率は個別の派遣社員1人の契約だけで算出されるとは限りません。公表される数字は、通常、事業所ごとの平均値です。個別案件の見積もりと公開マージン率が完全に一致しないことがあるのは、このためです。
|マージン率の計算方法を具体例で解説
マージン率の計算式はシンプルです。
| 項目 | 計算式 |
|---|---|
| マージン率 | (派遣料金の平均額-派遣社員の賃金の平均額)÷ 派遣料金の平均額 × 100 |
たとえば、派遣料金の平均額が16,000円、派遣社員の賃金の平均額が11,000円だった場合、差額は5,000円です。これを派遣料金16,000円で割ると、マージン率は31.3%になります。
この計算で大切なのは、分子に入る5,000円が利益だけではないことです。ここに社会保険料や有給費用、教育訓練費、募集費、営業担当者の人件費などが含まれます。実際の現場では、派遣社員の就業を安定させるためのフォロー体制や法令対応にもコストがかかります。数字だけ見ると大きく見えても、内訳まで見ると印象が変わることは珍しくありません。
また、同じ31%前後でも中身は会社によって異なります。研修に比重を置く会社もあれば、就業後フォローや福利厚生を厚くしている会社もあります。マージン率は、あくまで入口の比較指標です。数字の大小だけでなく、その背景にある運営方針まで確認する視点が欠かせません。
|マージン率の情報提供は法律上の義務
マージン率は、派遣会社が任意で公開している情報ではありません。労働者派遣法の改正により、派遣会社にはマージン率など一定の情報を提供する義務があります。厚生労働省によると、法改正後は事業所ごとに、関係者に知らせることが適当な事項として情報提供が求められるようになりました。
さらに、法改正により、インターネットを利用した情報提供も義務化されています。現在は、多くの派遣会社が公式サイト上で、事業所ごとのマージン率、派遣料金の平均額、派遣社員の賃金の平均額、教育訓練に関する事項などを公開しています。
確認するときは、単に「マージン率○%」だけを見るのでは不十分です。公開ページでは、次の情報も併せて見ると比較しやすくなります。
- 派遣料金の平均額
- 派遣社員の賃金の平均額
- 教育訓練の内容
- 労使協定を締結しているかどうか
- 対象となる事業所と集計期間
同じ会社でも、本社と支店で数字が異なることがあります。これは、マージン率が事業所単位で公表されるためです。比較の際は「どの事業所の数字か」「いつ時点の情報か」まで確認する必要があります。
【2026年最新】派遣マージン率の平均相場と内訳
|派遣マージン率の全国平均相場は約30%
派遣マージン率の相場を把握するうえで、まず押さえておきたいのが「平均はおおむね3割前後」という点です。厚生労働省の案内でも、一般的な派遣会社のマージン率は約30%程度とされています。実務上も、この水準は一つの目安として使いやすい数字です。
ただし、この30%は「どの会社でも同じ」という意味ではありません。マージン率は事業所ごとの公表が基本で、同じ派遣会社でも拠点や対象期間によって差が出ることがあります。派遣料金の設定、扱う職種、地域、教育体制、福利厚生の充実度によっても数字は動きます。平均値はあくまで比較の出発点であり、単体の数値だけで高い・安いを判断しないことが大切です。
昨今は、厚生労働省の調査でもマージン率の平均が上がってきたとされています。背景としては、働き方の多様化、派遣社員の受け入れ企業側で求められる対応の変化、研修やフォロー体制の整備などが関係していると考えられます。派遣会社が負担する社会保険料や有給休暇費用、教育訓練費などが積み上がれば、マージン率も一定程度は上がりやすくなります。
|【図解】マージン率の詳しい内訳 「派遣会社の丸儲け」ではない理由
マージン率という言葉だけを見ると、「派遣会社が差額をそのまま利益にしている」と受け取られがちです。しかし実際の内訳はかなり異なります。マージンには営業利益だけでなく、法定費用や運営コストが含まれています。
一般的な内訳のイメージは次のとおりです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 派遣社員の賃金 | 約70% |
| 社会保険料 | 10.9% |
| 有給費用 | 4.2% |
| 諸経費 | 13.7% |
| 営業利益 | 1.2% |
この表から分かるとおり、マージンの中で大きいのは社会保険料や有給費用、諸経費です。社会保険料には健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などが含まれます。これらは派遣会社が雇用主として負担するもので、利益ではありません。有給休暇を取得したときの費用も同様です。派遣社員が休んでいても賃金の支払いが発生するため、その原資が必要になります。
諸経費には、募集広告費、システム管理費、福利厚生費、担当営業やコーディネーターの人件費などが含まれます。人材を募集し、登録し、就業前の条件調整を行い、就業開始後の相談対応やトラブル対応を続けるには、一定の運営コストが必ずかかります。
|利益は一部にすぎない
上の目安では営業利益は1.2%です。もちろん会社や事業所によって差はありますが、マージン全体がそのまま利益になる構造ではありません。ここを誤解すると、「マージン率が高い会社は不当に高い」と短絡的に判断しやすくなります。
|職種・業種によってマージン率は変わる?
マージン率は、職種や業種によって変わります。すべての職種で同じ水準になるわけではありません。特に、専門性が高い仕事ほど平均より高めに設定されるケースがあるます。
理由の一つは、専門職では派遣料金自体が高くなりやすいことです。ITエンジニア、法務、経理、通訳、クリエイティブ職のように、経験や技術が重視される職種では、派遣社員の選定やマッチングにも手間がかかります。登録人材の確保、スキル確認、就業後のフォローにも専門知識が必要になるため、結果としてマージン率が高めになる傾向があります。
マージン率が高い・低い派遣会社、どちらを選ぶべき?
派遣会社を比較するとき、マージン率は気になる数字です。ただ、実務では「低い会社が得」「高い会社は避ける」と単純に整理すると判断を誤りやすくなります。厚生労働省も、マージン率は低いほどよいとは限らず、ほかの情報と組み合わせて総合的に評価することが重要と案内しています。
|マージン率が「低い=良い派遣会社」とは限らない理由
マージン率が低いと、派遣料金のうち賃金に回る割合が大きいように見えるため、感覚的には魅力的に映ります。けれども、低い数値だけで評価すると、必要な支援まで削られている可能性を見落とします。
数字だけを見て極端に低い会社を選ぶと、募集力が弱く候補者が集まりにくい、就業後のフォローが薄い、トラブル時の対応が遅いといった事態が起こる場合があります。
|マージン率が高い派遣会社の特徴とメリット
一方で、マージン率が高めの派遣会社には、追加コストに見合う理由があることがあります。重要なのは「高いこと」そのものではなく、「何に使われているか」が説明できるかです。
教育訓練が充実している、福利厚生や就業フォローが手厚い、募集やマッチングにコストをかけているなど、マージン率が高い派遣会社は、単に高コストな会社ではなく、採用難易度の高い条件に対応するための体制を持っているケースがあります。
|自社に合う「適正なマージン率」の見極め方
適正なマージン率は、業種や職種、求める人材レベル、必要なフォロー体制によって変わります。平均相場は参考になりますが、自社に合う水準は「必要な支援に対して過不足がないか」で判断するのが実務的です。
比較時は、見積額とマージン率だけでなく、次の観点をセットで見ると判断しやすくなります。
- その職種・業界での紹介実績があるか
- 研修やキャリア支援の内容が具体的か
- 就業開始後のフォロー頻度が明確か
- 法令対応や契約管理の説明が丁寧か
- トラブル発生時の窓口と対応フローが整理されているか
【2026年版】主要派遣会社のマージン率一覧
主要派遣会社のマージン率は、各社の公式サイトや事業所ごとの公開情報で確認できます。見る際に注意したいのは、全社平均ではなく「本社」「支店」「事業所」単位で公表しているケースがある点です。
| 派遣会社 | マージン率 | 対象期間 |
|---|---|---|
| ビースタイル スマートキャリア | 29.7% | 2026年3月時点で公開確認できる対象期間ベース |
| リクルートスタッフィング(本社) | 32.2% | 同上 |
| マンパワーグループ(新宿オフィス) | 32.1% | 同上 |
| パソナ(本社) | 29.5% | 同上 |
| エスプールヒューマンソリューションズ(新宿本社) | 30.7% | 同上 |
| パーソルテンプスタッフ(渋谷オフィス) | 30.7% | 同上 |
| ウィルオブ・ワーク(池袋支店) | 27.6% | 同上 |
| アデコ(首都圏1) | 15.2% | 同上 |
| ランスタッド(新宿事業所) | 34.9% | 同上 |
| スタッフサービス(新宿第一オフィス) | 25.8% | 同上 |
まとめ|マージン率の内訳を理解し、自社に最適な派遣会社を選ぼう
マージン率は、派遣会社を比較するうえで有効な指標です。ただし、数字だけで良し悪しを判断すると実態を見誤ります。重要なのは、マージンに何が含まれているかを理解し、自社が求める人材の質、サポート、対応力とあわせて総合的に見ることです。
派遣会社を選ぶときは、マージン率の高低だけでなく、依頼したい業務との相性を確認することが先決です。数字を鵜呑みにせず、契約後の運用まで見据えて選ぶことが、納得感のある派遣活用につながります。
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