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採用要件の作り方4ステップ!フレームワークや具体例も紹介

採用活動を進めるうえでは、どのような人を採るべきかを明確に言語化する採用要件が欠かせません。採用要件とは、採用時に必要なスキルや人物像、経験を具体的に定めた基準のことです。

本記事では、採用要件の基本的な考え方から整理すべき理由、作成手順、活用できるフレームワーク、職種別の具体例、よくある質問まで詳しく解説します。

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採用要件(人材要件)とは?

採用要件(人材要件)とは、採用時に自社に適した人材かを判断するために、必要なスキルや経験などを定めた基準のことです。労働条件や求めるスキル・経験、価値観、人柄や仕事に対する姿勢などを基準に定義を決めていきます。

例を挙げると、「営業経験が3年以上」「基本的なPCスキル」などです。

採用を曖昧な基準で進めると、採用のミスマッチが生じやすくなり、本人のモチベーションも下がってすぐに辞めてしまう状況に陥る可能性が高まります。

一方で、要件が明確であれば、自社で長く活躍してくれる人材に出会いやすくなるでしょう。

採用要件は、採用成功に向けた設計図のようなものです。生産年齢人口が低下し、人材不足が深刻化するなか、企業に適した人材を早期に見つけるためには、採用要件の明確化が重要な鍵を握っています。

採用ペルソナとの違い

採用ペルソナとは、自社で採用したい架空の人物像のことです。

企業が求める人材のスキルや経験などの基準を明確にした採用要件を基に、年齢や性別、ライフスタイルなど、より具体的な人物像を設定します。これにより、採用効率や精度を高めやすくなります。

採用要件を整理すべき3つの理由

採用要件をあらかじめ明確に整理しておく理由には、求める人材像の明確化、採用のミスマッチの防止、採用後の活躍・定着率の向上などが挙げられます。

メリットの観点から採用要件の必要性を解説します。

求める人材像を伝わりやすくするため

採用要件を整理しておくと、自社がどんな人材を求めているのかが、求職者に伝わりやすくなります

応募内容に「コミュニケーション力を重視します」とだけ書かれていても、求職者にとっては曖昧です。

しかし、「営業部門・開発部門など他部署と連携しながらプロジェクトを進める機会が多いため、調整力や説明力を重視します」と書かれていれば、求職者は自分に合っているかを判断したうえで応募しやすくなります。

結果として、求める人材が応募してくれる可能性が上がります。

採用のミスマッチを防ぐため

採用要件を明確に整理すると、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。曖昧な要件では、必要なスキルや人物像に合わない人材を採用してしまう可能性があるでしょう。

成長意欲がある人という抽象的な要件しかなかった場合、採用後に受け身な傾向がある、自主的に動けないといったギャップに悩まされることがあります。

自ら目標を立てて改善提案をした経験がある人と設定すれば、選考時にその行動を確認でき、採用の精度を上げられます。

採用要件の整理により、採用すべき人を見極められ、採用ミスのリスクを減らせるでしょう。

活躍や定着を見据えた採用をするため

採用要件が整理されていると、自社で活躍してくれる人材、自社に定着する人材を見極めやすくなります

採用後に成果を出せるかどうかは、スキルや経験だけでなく職場との相性や組織の価値観との一致が大きく関係します。要件に人物特性や価値観を含めると、そうした適合性も判断できるでしょう。

変化を前向きに受け入れる柔軟性やチームでの協働を重視する姿勢など、職場のカルチャーに合う特性を要件化しておけば、文化的フィットが高くなり、定着率も上がりやすくなります。

採用要件の作り方4ステップ

採用要件を作るときには、業務の棚卸しから社内での合意形成まで、順を追って整理することが大切です。これにより採用のブレを防ぎ、自社に適した人材を採用しやすくなります。

1. 業務の棚卸しをする

採用要件を作る最初のステップは、そのポジションが担う業務内容と期待される役割を正確に把握することです。

業務の実態を知らずに要件を決めてしまうと、必要なスキルや人物像が現実とズレてしまい、ミスマッチの原因になります。

例えば営業職の採用でも、担当するのが既存顧客か新規開拓か、インサイドセールスかフィールドセールスかで求めるスキルや人物像は大きく変わります。

業務内容や成果目標を洗い出し、どのような成果を、どのような環境で出す役割かを明確にすると、精度の高い採用要件を作成する土台になるでしょう。

2. 要件を洗い出す

業務内容を把握したら、次は評価基準として使えるように要件を洗い出します。

採用要件を洗い出す方法には、自社の事業や組織を分析する「演繹(えんえき)的アプローチ」と、自社で成果を挙げる人材の能力や志向を分析する「帰納(きのう)的アプローチ」があります。

採用要件を洗い出す方法概要
演繹的アプローチ自社の事業戦略を推進して価値を生み出していくために、どのような組織を作る必要があるのか、どのような人材で構成されるべきなのかを考え、求める人材の能力や特性にまで落とし込むトップダウン的な発想
帰納的アプローチ自社で実際に高い成果を出している人材がもっている能力や特性などを抽出するボトムアップ的な発想

実際に分析する際には、モデル社員をもとにする方法と現場からヒアリングする方法が活用できます。

モデル社員をもとに活躍要素をピックアップする

すでにその職種・ポジションで成果を出している社員を参考にし、共通する要素を採用要件とする方法です。実際の成功事例から逆算すると、何があれば活躍できるか、実証された基準を作れます。

営業職であれば、活躍している営業メンバーに共通している点を分析しましょう。

初動のスピードが早い、断られても切り替えが早いなどの共通点が見えてきたら、成果を出す行動特性として、要件に盛り込みます。

現場からヒアリングしてリアルな期待を引き出す

配属先のマネージャーやチームメンバーにヒアリングする方法です。

ヒアリングでは、今チームで困っていることや今後強化したいスキル領域、理想的な人物像などを質問します。現場から「マルチタスクに強い人が欲しい」という声があれば、複数の業務を同時進行した経験に変換して要件に落とし込みましょう。

3. 必須要件(Must)と歓迎要件(Want)を分けて整理する

洗い出した要件を「何が絶対に必要か」「どこまでが歓迎か」という基準で区別しましょう。例は以下のとおりです。

要件具体例
必須要件(Must)営業経験3年以上、基本的なビジネスマナー など
歓迎要件(Want)SaaS商材の経験、マネジメント経験 など

すべての要件を必須にしてしまうと、応募者の間口が狭まります。一方、条件を緩やかにすると、ミスマッチの確率が高まります。

要件の区別は、応募の間口と人材の質のバランスを保つ重要なポイントとなるため慎重に行いましょう。

また、満たしていても加点しない要件、または満たしていた場合に不採用とする不要要件(NEGATIVE)も決めておくのがおすすめです。

4. 要件案を共有し採用担当者と合意形成する

作成した採用要件は、関係者全員と共有し、認識をそろえておくことが重要です。

せっかく要件を作っても、実際に採用する担当者が勝手な基準で評価してしまうと意味がありません。一貫性ある選考のためには、合意形成が不可欠です。

採用担当者とのミーティングで、「この要件の意図は?」「この人物像はどう評価する?」とすり合わせることで、選考の判断基準を共有できます。要件の文書化により、再現性の高い採用が可能になるでしょう。

採用要件に活用できるフレームワーク

採用要件は、フレームワークを活用するとスムーズに定めやすくなります

代表的なフレームワークを紹介しますので、企業が求める人材を明確にするために活用してください。

MUST・WANT・BETTER・NEGATIVE

必要条件(MUST)、十分条件(WANT)、あればなお良い条件(BETTER)、不要な条件(NEGATIVE)の4項目に分類するフレームワークです。

決める際には、以下の流れで行います。

  1. 採用要件をMUSTとNEGATIVEの2つに分ける
  2. MUSTに分類した条件のうち、必須条件ではないと判断したものを優先度順にWANTとBETTERへ振り分ける

このフレームワークの活用により、人材に求める優先順位が明確になります。

コンピテンシーの氷山モデル

コンピテンシーの氷山モデル

コンピテンシーの氷山モデルは、人がもつ行動特性を氷山に例えたフレームワークです。

水面上に見える部分にはスキルや知識が、水面下には価値観や動機などがあるとし、水面下の部分が、表面に見える行動に大きな影響を与えていると考えます

見える部分、見えない部分両方の項目に自社が求める人材の特徴を当てはめていくと、採用要件がより具体的になってくるでしょう。

GRPIモデル

GRPIモデル

GRPI(グリッピー)モデルとは、組織やチームの健全性を評価・改善するためのフレームワークです。Goal(目標)、Role(役割)、Process(手順)、Interpersonal relationship(関係性)の4つの要素から構成されます。

採用要件に活用する際には、上のGoalから順に分析・抽出していきます。順番に検討することで、チームや組織の現状を把握したうえで必要な人材を明確にできるでしょう。

採用要件を作成するときの注意点

採用要件の作成においては、つまずきやすいポイントがいくつかあります。特に気をつけたい内容を、対応策とあわせて紹介します。

採用要件に入れてはいけない項目に注意する

採用要件には年齢・性別・差別につながるおそれのある事項など、入れてはいけない項目があります

入れてはいけない項目概要
募集・採用における年齢制限の禁止労働施策総合推進法では、事業主に対し、募集・採用において年齢を理由とした制限を設けることを禁止。2007年の法改正により義務化となる
▶参考:厚生労働省『募集・採用における年齢制限禁止について
募集・採用における性別による差別の禁止男女雇用機会均等法 第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
▶引用:e-Gov法令検索『の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
募集・採用における障害者への差別禁止と合理的配慮2016年4月より改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務化となる
▶参考:厚生労働省『雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務

なお、厚生労働省では、就職の機会均等を確保するため、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施するよう事業主に呼び掛けています。(▶参考:厚生労働省『公正な採用選考について』)

要件を盛り込みすぎない

採用要件は必須要件と歓迎要件に分けることが重要ですが、そもそも盛り込みすぎないことも大切です。

要件が多ければ、仮に分類したとしても応募者の間口が狭まり、結果的に誰も応募してこないという事態になりかねません。

例えば、営業職の要件として「IT業界経験あり」「マネジメント経験あり」「英語ができる」「新規開拓に強い」などをすべて入れてしまうと、応募できる人材が極端に少なくなってしまいます。

採用要件は本当に必須か、本当に歓迎か、常に検討し直すことが重要です。

主観的・抽象的な表現は避ける

採用要件は、人の能力や特性を客観的に評価するツール(アセスメントツール)などを活用して、説得力のある要件を設計しましょう。

人事と現場、両方の視点を取り入れて作る必要がありますが、現場の声だけでは主観的な要件になりがちです。

また、具体的な行動で評価できる表現にすることも大切です。

例えば、柔軟性がある人ではなく、複数の業務を同時進行で対応した経験がある人など、実際の行動や経験として確認できる表現にすると、求職者も採用担当者も判断しやすくなります。

PDCAを回して最適化していく

採用要件は一度決めたら終わりではなく、効果検証と修正を繰り返し、最適化していくことが重要です。

これにより採用要件の精度が上がり、企業が求める人材を的確に見極められるようになります。

職種別の採用要件の具体例

採用要件の作り方を把握したうえでいざ自社で文書化しようとしても、結局どのように書けばいいのか悩むでしょう。

この章では、営業職・事務職・エンジニア職を取り上げ、実際に活用できる具体例を紹介します。

営業職の採用要件例

営業職では、職種や営業スタイルに応じたスキル・経験と、成果を上げる行動特性をバランス良く要件に盛り込むことが重要です。

一口に営業といっても、新規開拓とルート営業、無形商材と有形商材では、求められる力が大きく異なります。

以下は、SaaSやコンサルティングサービスなどの法人向け商材の提案営業職を想定した採用要件例です。

SaaSやコンサルティングサービスなどの法人向け商材の提案営業職を想定した採用要件例
必須要件・法人営業経験3年以上
・提案型営業の実務経験
・CRM(顧客関係管理)ツールの利用経験
歓迎要件・「SaaS(Software as a Service)プロダクトの販売経験
・自社製品の改善提案に携わった経験
・マネジメント経験(サブリーダー以上)
人物像・顧客の課題を引き出すヒアリング力に優れている
・受注に向けて周囲を巻き込みながら粘り強く進められる
・変化に柔軟に対応し、自走できる

営業職では、単なる営業経験ではなく、営業の種類や成果を要件で具体化することが大切です。

事務職の採用要件例

事務職では、正確性や調整力に加え、社内外のコミュニケーションに関する能力も明確に要件化することがポイントです。

一見、定型業務中心に見える事務職でも、他部署との連携や突発対応など、実務上求められる力は多岐にわたります。

以下は、一般的な総務・庶務系の事務職を想定した採用要件例です。

一般的な総務・庶務系の事務職を想定した採用要件例
必須要件・一般事務または総務業務の実務経験2年以上
・ExcelやWordなどの基本操作スキル
・電話、メール対応のビジネスマナー
歓迎要件・経費精算、請求書発行の経験
・社内制度の整備、運用に携わった経験
・労務、採用など他部門との兼任経験
人物像・丁寧で正確な仕事を心がけられる
・複数の関係者と調整しながら業務を進められる
・環境やルールの変化にも前向きに対応できる

事務職は当たり前のレベル感が人によって異なるため、経験だけでなく人物像も具体的に描くことが重要です。

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エンジニア職の採用要件例

エンジニア職では、技術スキルだけでなく、開発スタイルやチームへの貢献姿勢を明文化することが要件設計のポイントです。

エンジニアの専門性は高く、現場とすり合わせていない要件だと、応募者にとってミスマッチになる可能性があります。

以下は、Webアプリケーションエンジニアを想定した採用要件例です。

Webアプリケーションエンジニアを想定した採用要件例
必須要件・Webアプリケーションの開発経験2年以上(フロント / バックエンド)
・Git(分散型バージョン管理システム)の使用経験
・チームでの開発経験
歓迎要件・React(JavaScriptのUIライブラリ)やVue(進化型フレームワーク)の使用経験
・要件定義、設計などの上流工程経験
・アジャイルまたはスクラム開発の経験
人物像・技術的課題に対して前向きに学習、対応できる
・チームでのレビューや相談に積極的である
・プロダクト全体を意識して開発できる

エンジニア職の採用要件は、現場の使用技術・開発体制を反映した実務を想像しやすい条件設定が大切です。

なお、派遣社員で採用要件を考える場合は、法的な注意点があります。詳しくは以下の記事も参考にしてください。

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派遣社員を採用する際にも、企業に適した採用要件を明確にすることで、最適なマッチングが可能です。職種に合わせた内容でサポートしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

採用要件に関するよくある質問

採用要件を定めるときには、さまざまな疑問が生じるでしょう。よくある質問にお答えしますので、疑問の解消にお役立てください。

人材採用の要件定義とは?

人材採用の要件定義とは、企業が求める人物像を明確に定義することです。

必要なスキルや経験、知識、能力、価値観、行動特性などを言語化し、採用活動の基準や指針を定めます。

採用で重視することは何ですか?

採用で重視することは企業によって異なりますが、一般的には人柄やコミュニケーション能力、主体性、協調性、熱意、成長の可能性などが重視される傾向があります

新卒採用では特に、ポテンシャルや企業への理解度も重要視されるでしょう。

まとめ

採用要件は、どのような人を採るべきかを判断するための基準です。曖昧なまま採用を進めると、評価のブレやミスマッチを招きやすくなります。

重要なのは、業務内容や現場の期待から逆算し、評価可能な要件を明文化すること、社内で共通認識をって運用できる形に仕上げることです。

初めて採用要件を設計する人でも、今回紹介したステップと注意点を押さえれば、客観的で再現性のある採用基準を作成できるでしょう。

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<この資料で分かること>
・派遣の依頼から受け入れまでの流れと必要な準備
・失敗しない「要件定義」のコツ
・コストを抑える派遣の活用方法